学生の頃、同級生の美術部員たちから美術部への強い勧誘を受けていた。
美術も絵を描くことも好きだけれど特別上手いわけでもなく
完全に自己満足の範疇だった私は美術部への入部には興味がなかった。
「描きたければ描きたいものを描きたいときに描きたい場所で描く」
などと言いながら笑顔で断り続けていた。
それよりも何十年も部員数がゼロで
今年ある一定人数の在籍が確認できなければ廃部になると言われていた部があったのだけれども、
それを面白半分で仲間たちと復活させる事の方に興味を奪われていたのだ。
しかし、ある日お気に入りの「アンドーナツ」を貢がれ、
うっかりパクッと一口、口にしてしまったのだ。
「あっ……」と思うも時既に遅し。
目の前にはニヤニヤ顔の部員たちの姿があった。
顧問と部員全員に緩いスタンスでの在籍許可を取り在籍することになった。
その結果、卒業アルバムには複数の部に所属している証拠写真を抑えられることになったのも今ではいい思い出だ。
その時、人物を描くセンスが皆無である私に顧問が難題をふっかけてきた。
せっかくなのだから、卒業までに石膏像を1人仕上げてみろというのだ。
もちろん、石膏の人物たちを拝むのは神話の中だけにしてほしいものだと丁重にお断りした。
しかし、顧問は一歩も引かなかった。
「好みの石膏像の一人や二人居るだろう、なかなか男前揃いだぞ」と
奥の部屋から重たい石膏像を何度も運びだし私の前に並べた。
顧問のその姿に負け1人だけならと渋々、難題を受け取った。
今回、どうしてこのようなお話しなのかと言いますと、
ここ最近、美術の授業でも使われる石膏像をアイドルのように扱った
石膏ボーイズが密かに人気なのだと小耳に挟んだからなのです。
本にフィギュアや缶バッチなどのグッズ販売に止まらず、
ホールイベントまで行われているというのです。
ステージ上に石膏ボーイズと呼ばれる石膏像(のアイドル)が4体並び、
それをファンが愛でて触れて写真を撮って賑わうのだそう。
石膏像の美しさに着目してアイドルとして売り出す発想は面白いのだけれども、
果たしてハマる方がどれ程いるのだろうか?と思われる方もいらっしゃることでしょう。
これが学校で石膏像を目にする機会の多い10代から40代、50代の方までと
幅広い年齢層の方々が虜になっているのだそうです。
左からヘルメス、メディチ、聖ジョルジョ、マルスなのですが、
このような人物設定がされています。
ヘルメス:ギリシャ神話の青年神。口がうまく、色んな人と仲良くなれ末っ子気質で明るくしたたか。
メディチ:イタリア政財界のトップでメディチ家の三男。頭の回転が速く芸術好きな自由人。時々マニアックな発言をする。
聖ジョルジョ:軍人で聖人。正義感が強く真面目。人に対しては優しいけれど、自分に対してはストイック。時々強引な所がある。
マルス:ローマ神話の軍神。豪快で何事にもまっすぐな性格で喜怒哀楽がわかりやすい。
石膏像と聞くと「大変だった」という思い出や
美術室にあるものというイメージしかないのだけれど、
あの石膏像たちがアイドルとして活躍しているのだと知り
顧問の言葉が久しぶりに脳裏を横切った次第です。
どうしてこの4人が選ばれたのかは分かりませんが、
彼らのおかげで石膏像が売れているのだそうです。
私も「インテリアやギフトなどにも」という言葉を目にして
二度見、三度見をしてしまいましたが間違いないようです。
「どのようなことも楽しみ方は無限大、見る者次第」
本日は、このような着地点でお開きとさせていただきたいと思います。
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