少しずつベッドの中の居心地の良さが増し始め、
秋の中に、すぐそばまで来ている冬の匂いも微かに感じられるようになってきた。
このような時は、ふとカラダが温かいスープを欲することがある。
この日の私はそうだった。
和風でも、洋風でも、中華風でも良いのだ。
とにかくカラダにじんわりと染み入り広がっていくあの感覚、カラダが喜ぶスープを飲みたい、そう思った。
野菜ストッカーとして使っているカゴを覗きこむと、
大量の玉ねぎがゴロゴロとカゴの大半を占めていた。
そうなると目指すゴールは、
飴色に炒めた玉ねぎからでる甘さとコク、香りがぎゅーっと凝縮された
黄金色に輝くオニオングラタンスープ。
私は軽く腕まくりをしキッチンに立った。
まな板と包丁の音に乗って、ひたすら玉ねぎをスライスする時間は
目がしょぼしょぼしてくることを除けば、
自分の中の余計なものが少しずつ抜けていくようで心地が良い。
本来はじっくりと1時間以上炒めたいところだけれども、
この日は電子レンジの力を借りて時短バージョンの玉ねぎを飴色に炒め煮込んでいく。
そう言えば、厚手のコートにマフラーや手袋に身を包み
「寒い、寒い、寒い」と脳内で呟きながらがパリ市内を歩いていたときのこと。
カフェテラスであつあつの湯気が立ち上るオニオングラタンスープを飲む、
というよりは食べているフランス人たちを頻繁に見かけていた。
とても絵になる光景でおしゃれな雰囲気が漂っていたのだけれど、
内心、これだけ寒いのだからテラスではなく
店内で食べればいいのに、と思ってしまったことこはここだけの話。
もともとオニオングラタンスープは、市場で働いている人たちの体が温まり、
お腹も満たされるようにと作られたものが始まりなのだとか。
オニオングラタンスープが誕生した当時、
市場で初めて口にした人たちにとってそれは、心身に染み渡るスープだっただろうなと
いい塩梅に煮込まれた玉ねぎを覗き込みつつ想像した。
そして、しっかりと水分を飛ばしカリッと焼き上げたバゲットに
軽くニンニクをこすって香りを移したものを器の底に敷く。
炒め、煮込まれを経てくったりと玉ねぎと一緒に飴色のオニオンスープを器に注いだ。
これだけでも十分なのだけれど、
バゲットで器に蓋をするかのようにバゲットを浮かべたらグリュイエールチーズと
パルミジャーノ・レジャーノチーズを乗せてオーブンへ。
シンプルだけれどもボリュームもあって、
玉ねぎ効果で血液だってサラッサラになるであろうオニオングラタンスープ。
バゲットは時々、焼き餅に変わることもある。
チーズは、溶けるタイプのスライスチーズを乗せることもあるし、
チーズ無しのこともある。
ただ、どのような組み合わせでも共通しているのは、
ひと口スープを味わえばカラダもココロもほっこりご機嫌さんになるということ。
秋もグッと深まってきましたね。
今宵は、温かいスープでほっこりしてみてはいかがでしょうか?
忙しい時こそ上手にホッと一息、ついてみてくださいませ。