秋の足音が聞こえ始めた頃、百人一首かるたが展示してある場所へ足を運んだ。
手のひらに乗るほどの小さなかるたの中に丁寧に描かれた絵や文字は、
趣があり、雅な雰囲気を醸し出しています。
あまりにも崩されている文字をすらすらと読めるようになるには、
もう少し時間と経験を要するけれど、
ただ、そこにある雰囲気を味わうのも楽しいものです。
私たちが何気に使っている「かるた」という言葉。
これは、「カード」を表すポルトガル語で、
ポルトガルの宣教師たちを日本まで連れてきた船乗りたちが日本に持ち込んだと言われております。
ですから、「百人一首かるた」とは、「百人一首カード」という意味なのです。
船乗りたちのカードゲームをベースに、
日本の伝統的な「貝覆い」や「貝合わせ」といった遊びが合わさり、
私たちの知る「かるた遊び」が生まれました。
貝覆い、貝合わせというのは、トランプの神経衰弱のようなもので、
2枚貝を2つに分けて使うのですが、2枚貝は均等に割れることが無いという性質を利用して、
片方の貝を頼りに、もう片方の貝を探す遊びです。
このポルトガルと日本の遊びから生まれた百人一首は、
嫁入り道具のひとつだったこともあるようです。
このような大人が楽しむためのアイテムとして生まれた「かるた」なので、
そこに描かれている和歌には、
大人だからこそ見ることができ、感じることができる景色が封じ込められていたりします。
更に、描かれている絵には当時のインテリアやファッションのトレンドが記されているようでもあり、
和歌を知らなくても視点を変えるだけで違った楽しみポイントが表れます。
今回は、ちょっと違った視点から見える世界を
私、柊希がナビゲートさせていただきたいと思います。
温かいお飲み物を片手に、ゆったりお楽しみくださいませ。
百人一首かるたの中にある世界のインテリアに注目してみると、
「几帳」というものを目にすることができます。
「几帳」というのは、平安時代に生まれたお部屋を飾る調度品のひとつです。
調度品でありながら、間仕切りや目隠しにも使うことができる実用性を兼ね備えたものでした。
下の画像のようなものなのですが、
皆さんも、時代劇やお寺や神社、その他の絵巻物や和空間で目にされたことがあるのではないでしょうか?
ご覧いただくと分かるかと思いますが、
几帳に使う布の生地質や柄、色などで季節感やおもてなしの心などを表しておりました。
屏風にも似た几帳ですが、屏風のような圧迫感がなく繊細さと優美さも兼ね備えており
美意識が高かった貴族社会で生まれたものです。
そして、「几帳面」という言葉も、この「几帳」がもとになっております。
几帳を使って様々な季節感やおもてなしをすることは、
見た目以上に神経を使うことでした。
これを手を抜かずに日常的にさりげなく行う様子から「几帳」という言葉が生まれます。
そして、この几帳という調度品は、
台の上に二本の柱を立て、柱に横木を渡し、横木の上に布をかける仕組みなのですが、
人の目にとまる機会もないであろう二本の柱の角は削って丸みを帯びさせ、
更に装飾が施されておりました。
このように細部まで丁寧に行う様子と、
柱の角(面)を取る様子から「几帳面」と言う表現が生まれています。
いかがでしょう?
和歌に触れずとも見える世界や知ることができる世界があると思いませんか?
今回は「百人一首かるた」から当時のインテリアや、
そこから生まれた言葉に触れてみましたが、
私たちが目にしているもの、耳にしているものの見え方はひとつではありません。
様々な角度から欲張って楽しんでみてはいかがでしょうか。