その日は、ホームパーティーの準備をしておりました。
人数分の各種グラスをキュッキュッと磨いていた時に、
ふとある日の遠い出来事を思い出したのです。
先日もフランスの迷信にまつわるエピソードをお話させていただいたのですが、
こちらは、素敵な対応と迷信に出会った出来事でした。
今日はそのときのお話を少し。
お時間ございましたら、のんびりとお付き合いくださいませ。
ある日、ホームパーティーへお呼ばれしました。
毎週ではなかったのだけれど、
外国の方は毎週のように仲間や友人たちとホームパーティーをしているのだな。
そのような印象をこっそりと抱きつつ、その日も参加しておりました。
様々なおもてなしの方法や気遣いに感心させられたり、感動したり、気持ちが温かくなったり、
時に日本との違いや感じ方の違いに戸惑ったりもしつつ、
言葉の壁があったとしても想いは何らかの形で届くものなのだなと思ったりもして。
楽しいお喋りをしていると、何処かからかシャリシャリと妙な音が聞こえたのです。
その場に居た皆が「今のは何の音?」というような雰囲気で辺りを見渡しました。
すると、一人の女性が「ごめんなさい、グラスを片付けようとしたら割ってしまって」
と申し訳なさそうに手にしているグラスを見せました。
飴細工のように薄くて繊細なクリスタル製のグラスは、
彼女の手の平の中で粉々になっておりました。
幸い怪我はなかったもののグラスは粉々で、彼女の顔から笑顔がスッと消えました。
明らかに特別なグラスだと分かるものでしたので、
自分が逆の立場だったら同じように笑顔が消えた事でしょう。
何かフォローをしたくても思うような言葉が見つからず、
辺りのお片付けに取りかかろうとした時、
ホームパーティー主催者の女性がとても明るい声でこう言ったのです。
「怪我がなくて良かった!それにラッキーね!ハッピーなことが起きるはず!」と。
グラスを割ってしまった彼女と、きょとんとしている来客に女性が続けました。
「グラスを割ってしまった時というのは、
ハッピーなことが起きるわよ!というお知らせだから、
すぐに目を閉じてお願い事をして!早く!!」と。
グラスが割れて少しだけ場の空気が揺らいだのですが、
主催者の女性のその言葉で、その場の空気がとても柔らかく和んだのです。
「グラス(特にクリスタル製)を割ってしまうのは吉兆の知らせだから、すぐにお願い事をすると良い。」
というのはフランスの迷信なのだそう。
その時の私にとっては馴染みのない迷信だったこともあり、
迷信よりも、この場の空気をあっという間に素敵なお話で和ませた主催者の女性の対応にとても感心した出来事でした。
年末年始は大勢でお食事をする機会が増えますよね。
誰もが気を付けてはいても、粗相をしてしまうこともあります。
また、周りは気にしていなくても粗相をしてしまった当人というのは、
何気に気にしてしまっているものです。
そのような時は、誰かのひと言がその場や当人を柔らかく和ませるものですので、
このようなシチュエーションに遭遇された際には、
「グラスを割ってしまう時は吉兆の知らせ」を使ってみてはいかがでしょうか。
ただ、自分が割ってしまった時にこの迷信をうっかり口に出してしまわぬよう、ご注意あれ!
そのような時は、素直に心を込めた「ごめんなさい」を伝えましょうね。
大切な方、大切な仲間との時間が、楽しい時間となりますように☆彡