エレベーターホールで体の割に大きなランドセルを背負った小学生の兄弟と一緒になった。
最近は何かと気にかけることが多いため、そのエレベーターを見送ることにし、郵便受けをのぞきに行った。
届いていた郵便物を手にエレベーターホールに戻ると、ドアを開けたまま待っていてくれた兄弟2人に、「お気遣いなく、ご一緒にどうぞ。」と言われた。
見た目からは想像し難い一言一句に、大変失礼ながら笑いそうになったけれど、緩む口元にぎゅっと力を入れ、お礼を言って急いで乗り込んだ。
しかしそうは言っても、小学校低学年の男の子たちである。
「“とう”が付く言葉はなーんだ」というお兄ちゃんの問いかけに、全身を使って戦隊ものシリーズの戦闘ポーズを取って「“とう”」と答える弟くん。
再び緩む口元に力を入れながら先に降りる彼らの背中を見送った。
今のは反則だ、そう思いながら私もバベルの塔、五重の塔、大アルカナの塔……ピサの斜塔にエッフェル塔。
あの子が求めていた“とう”の答えが“塔”だったのかは分からないけれど、私も自宅玄関に辿り着くまで、思い出せるだけの“とう”がつく言葉を挙げてみた。
どれも、すぐさま戦隊ものシリーズの戦闘ポーズが浮かぶインスピレーションを羨ましく思う弟くんの“とう”には敵わないような気もするのだけれど、私の中で“とう”という言葉は“塔”のイメージだということが分かった。
そして最後にと絞り出たのが“金字塔”である。
日本ではもう使われることが無くなったけれど、ピラミッドの当て字が金字塔。
どうしてピラミッドに金字塔という字を当てたのか、それはシンプルに、ピラミッドを眺めていると「金」という字のカタチをしたような塔でしょ?ということらしいのだ。
え?それだけ?と拍子抜けするくらいシンプルで適当な当て字である。
しかし、ちょいちょいとシンプルで適当なことを採用する、この感性がいいじゃないかと思ってしまう。
そしてやはり、遊び心とギャップは大切である。
可愛い兄弟にそう教えてもらった日。
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