幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

ますのことば遊び。

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信号待ちをしながら、2月かと改めて思う。

深呼吸をして、冷たい空気をすーっとお腹の底、奥深くまで送り込んだ。

焦ったところで大差はない。

今日も丁……と思いかけたところで信号が青に変わった。

穏やかとも忙しないともとれる人混みに紛れながら横断歩道を渡る中、今日も丁寧に参りますかと、先ほどの心の声の続きをもう一度繰り返した。

その道をしばらく歩くと、年季が入った店構えをした定食屋が出てくる。

入り口にかけられている暖簾は藍染だろうか。

素敵な藍色をした厚手の布地に白い筆文字で店名が入れられている。

筆文字の店名部分は飴色に日焼けしており、お世辞にもきれいな暖簾だとは言い難いのだけれど、不思議とその日焼け具合が店の雰囲気に合っていて、良い味を出しているのである。

私は未だ一度もこの店に入ったことはないのだけれど、お昼時にはどこからともなくお客がやってきて、ほどほどに順番待ちの列を作っている店だ。

時折、お客の出入りによって、外から店内を垣間見ることができそうな瞬間に出くわすことがあるけれど、その暖簾が程よい目隠しとなり、店内は入ったものぞ知る空間と化している。

私の勝手な想像では、スマートフォン決済のシステムなど導入されておらず、お会計場所にはそろばんなんかも置いてあるような。いや、ここは流石に電卓だろうか。

そのような、古き良き時代にタイムスリップできるような町の定食屋ではないだろうかとみている。

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今日こそは、店内をちらり覗き見ることができるだろうかと思いながら店の前を通ると、6、7名の客が並んでいた。

外に出してある看板には、本日のおすすめとして生姜焼き定食と鯖の味噌煮定食が挙げられていた。

どちらも甲乙付け難い、と思いながら通り過ぎようとしたときに目に飛び込んできたのは、「納豆のお替りあります」という貼り紙だ。

「あります」の「ます」の部分は、正方形の右上角から左下角め向かって線を引いた枡記号(ますきごう)が使われていて、やはり古き良き時代にタイムスリップできるのではないだろうかと想像した。

枡記号(ますきごう)と言えば先日、この言葉遊びのような表記を知らない大人が増えてきているらしいと耳にした。

「納豆あり〼=納豆あります」「日本酒あり〼=日本酒あります」「〼〼=増々」などと読むのだけれど、枡記号を使った表記は通じないことがあるのだとか。

店主の何気ない遊び心が通じないのだとしたら、それは少し残念だと思った。

あの定食屋の店主は、納豆のお替りがあることに気が付いてもらえただろうか。

勝手な心配と共に、今年こそ、あの暖簾をくぐり抜けてみようかしら。そのようなことを思った日。

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