冷蔵庫の中に眠っているフルーツをザクザクと大胆にカットした。
甘酸っぱい香りに脳の奥をズキューンと射抜かれたような気分になった。
堪らず、ワンカットその場で口の中へと放り込む。
私の体は、じゅわーっと染み出す果汁を砂漠の如くグングンと吸い込んでいく。
その、自分の意志とは少し違う感覚に
自分自身の生命力を感じたような気がした。
もうワンカットと伸びそうになった手をグッと抑え込んで、
カッティングボードの上に転がっているフルーツを
透明のティーポットへゴロゴロッと入れる。
冷凍庫から冷凍ベリーも取り出して彩りを良くしたところで
準備しておいた濃い目の紅茶を優しくたっぷり注ぎ込んだ。
紅茶の中でゆらりたゆたうフルーツのおいしそうなこと。
フルーツティーに合わせるスイーツも作ってしまいたいところだけれど、
お菓子作りを苦手とする私は身支度を整えると近くの洋菓子店へ急いだ。
色鮮やかなおしゃれなケーキがショーケースに並んでいたけれど、
その日の私のお目当ては、
いつも端の方で控えめに並んでいるシュークリーム。
この「シュークリーム」という名前、
実は和製外来語だということをご存知でしょうか。
しかもキャベツを意味するフランス語のchouと英語のcreamを合わせて
「シュークリーム」と言うのだから外国語のごった煮のような名前です。
皆さんも洋菓子店などで「シュー・ア・ラ・クレーム」という名前を目にしたことはありませんか?
フランス語ではシュークリームのことを、
キャベツのような形のシューにクリームを詰めたお菓子という意味を込めて
「シュー・ア・ラ・クレーム」と呼んでいます。
一方、英語では何と呼ぶのかと言いますと「クリームパフ」と呼ぶことが多いです。
呼び方は様々ですが、シュークリームはフランス発祥の洋菓子なので、
本名は「シュー・ア・ラ・クレーム」、
ニックネームが「シュークリーム」、「クリームパフ」といったところでしょうか。
そして、お店ではシュークリームの近くにエクレアが並んでいることがありますが、
エクレアもフランス発祥の洋菓子です。
シュークリームとの違いはシューの形と
チョコレートがかけられていることのようです。
「そうだとは思っていたけれど、本当にそれだけなんだ」
という声があちらこちらから聞こえてきそうですが、それだけです。
名前は「エクレール・オ・ショコラ」と言うのですが、
このエクレールは稲妻という意味です。
どうして稲妻?と思われるかとおもうのですが、
細長いシュー生地を焼き上げると表面に「ひび」が入るようなのです。
このひびが稲妻に似ていること。
そして、表面に塗られたチョコレートが溶ける前に稲妻が走るような速さで
素早く食べなければいけないお菓子という理由から
「エクレール・オ・ショコラ」と名付けられたようです。
シュークリームやエクレアを見かけられた際には、
キャベツか稲妻か、このお話をチラリと思い出していただければ幸いです。
その日の私は、初志貫徹。
ブレることなくお目当てのシュークリームを手に入れて
自家製フルーツティーを楽しんだのでありました。
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