古い映画をBGM代わりに流していたのだけれど
視界の端に時々入る女性を捉えながら、
女性のおしゃれというものはいつの時代もちょっぴり大変なのだな、と思う。
これでもかという程に体を締め上げてウエストを細く見せ、
胸には胸を押し上げて豊かに形作るコルセットを身に着ける。
腰に装着しているスカートを膨らませるための鉄製のパニエはそこそこの重さだ。
その上からドレスを纏うのですから十二単の比ではなかったのではないでしょうか。
ちょっとしたアスリートのトレーニングにもなりそうなアイテムを常に身に着ける日々です。
女性であればキレイで居たいと思う心理に今も昔もないのだろうけれど、
これほどまでのこと、私には到底真似のできない生活だと思いながら画面の中の女性たちを眺めました。
19世紀ヴィクトリア朝時代は、
階級を問わずコルセットの着用が当たり前の世の中でした。
そして、コルセットの着用は貞淑な女性としての義務だったのだそう。
ウエストが細ければ細いほど女性としての価値が高まり結婚に繋がった時代で
理想のウエストサイズは男性が片手でつかめるくらいの45センチと言われていました。
この時代の女性たちはコルセットで常に体を異常なまでに締め付けていたため
内蔵や肋骨が変形し、病気がちだったというのは歴史上でも有名な話。
そこまでして何故?と不思議に思うのだけれども
当時は「在って幸せ、無くて幸せ」と言えるほど自由な時代ではなかったのでしょう。
結婚を自分の意志で選ぶことが出来なかった時代の女性たちは
医師が警鐘を鳴らしても聞く耳を持つ女性は居ないに等しく、
素敵な男性に見初められる為の努力に一つとして
コルセット生活を止めることはなかったのだとか。
更に、当時の西洋には理想と言われるウエストサイズだけではなく、
か弱くて、繊細な女性を良しとする風潮もあったようです。
そう言えばヨーロッパの女性たちが目まいを起こして男性に寄りかかるシーンや
気絶するシーンなどを映画や舞台、小説などで度々目にすることがありますよね。
中には女性側からの狙いを付けた演出も少なからずあったのかもしれません。
しかし、その多くはコルセットが原因で呼吸が浅くなっており、
日頃から貧血状態であったためではないかと言われています。
コルセットやパニエを身に着けたままの食事や舞踏会は
想像するだけで彼女たちの体に相当の負担をかけていたことが分かります。
実際に、食後に倒れる女性や舞踏会中に肋骨が臓器に刺さり命を落とした女性がいたという実態が記し残されているのだそうです。
女性にとってのおしゃれは、楽しくてちょぴり大変な事もあるけれど、
この時代の女性にとってのおしゃれは命がけだったようですね。
愛する人の為にキレイでいたい、おしゃれでいたい。
もちろん女性であれば芽生える気持ちの一つですが、
自分の気持ちが上がるおしゃれを自分の為にすることが出来る。
これは、今の時代の私たちにとっては当たり前のことだけれども、
実はとても自由で素敵な感謝すべきことなのかもしれませんね。
まずは自分のこころがワクワク、ウキウキするおしゃれをしてみませんか?
今日もあなたがクローゼットの前で目を輝かせる瞬間がありますように。