春らしいスマートフォンケースが欲しくなり、空き時間にバラエティーショップを覗くことにした。
所狭しと様々なアイテムが並んでいる空間は、いくつになっても気分が高揚するし、
世の中の傾向や興味をザッと把握できる場所でもあり、飽きることはない。
そして、店内に足を踏み入れた瞬間、
本来の目的を忘れて目に飛び込んでくるモノからモノへと渡り歩くのもいつものことだ。
ひと通り見て回ったところでスマートフォンケースの陳列棚が視界に入り、
「あ、そうだった、そうだった」と本来の目的を思い出した。
多種多様なケースは眺めているだけでも十分に楽しいのだけれども、
絶対に選びはしないようなものであるにも関わらず、
とりあえず手に取って見てしまうのはどうしてだろう。人の性なのだろうか。
そのような事を思いつつ商品を眺めていると、あるものが目に留まった。
目に留まったのは、ケースではなくポップの方。
そこには「バックスキン(革の裏)を活かしたデザインと~」と続いており、
私はある日の出来事を思いだした。
実はワタクシ、4、5年程前まで「バックスキン」は、
ポップに書かれていたように革の裏側を意味しているのだと思っていたのだ。
しかし、あるとき外国人の友人に「意味が違う、柊希は間違っている」と指摘され、
長年の間違いに気付くこととなった。
その時の私は、「間違ってないよ、backskinでしょ。BACK。」と自信満々に返したのだけれど、
もともと「バックスキン」は英語で “buckskin” と書くというのだ。
この時点でハッとしたのだけれど、buckというのは「牡鹿」のこと。
それならば、「バックスキン」は鹿革素材ということになる。
だけれども日本人は「背後」を表すbackだと思いこんでしまったようで、
“backskin” と間違ったまま使われ始めた結果、
革の裏側という和製英語を生み出すこととなったのだそう。
もちろん、鹿革があまり出回っていないことも幸いし、
皮の裏側を意味する「バック(back)スキン」なのか、鹿革を意味する「バック(buck)スキン」なのか、
一体どっちなの?という混乱を招くことも無いまま現在に至るようだ。
指摘を受けた当時、「発音だって違うでしょ」と友人に言われ頷いてはみたのだけれど、
正直、話の前後がない状態で単語のみを聞いて聞き分けられる程、
明確な違いは無いじゃないかと思っていたことは、ここだけの話。
私は、聞き間違いとは言え、悪くはない発想だと思っているのですがいかがでしょうか。
「バックスキン」という名の素材に触れる機会がありましたら、
裏側を使用した素材なのか、鹿革素材なのか、
今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。