お気に入りのものだけに囲まれて暮らしたい。
その想いは年々、増しているように思う。
と同時に、その“お気に入り”だと認定する基準も高くなりつつある。
それは、少しずつではあるのだけれど、自分自身のことや自分が本当に望むものが、分かってきた印だろうとも思う。
変わらず好きなものもあるし、自分の目には見えない成長に伴ってということなのか、
昨年の私には確かに必要だったものなのだけれども、今の私には必要ない。そう思うものも出てきたりする。
その小さな変化に気付くことができることができるからか、それとも、単なる気分転換なのか。
多分、その両方を求めて、私は時々、自分の持ち物や暮らしのために所持している、あれやこれやを見直すことがある。
先日は、キーボードの上に乗せていた指先が熱を帯びてきたものだから、
気分転換に収納庫の中を片付けることにした。
扉を開けると、ずらりと並ぶダークセピア色をした収納ボックスやバスケット。
各収納場所にあったテイストのものや専用のものを揃えていたこともあったのだけれども、
どういう訳だか、親元を離れてからというもの、割と短いスパンで引越を繰り返しているため、
引越先のスペースに合わせて、収納ボックス類を買い揃える手間と時間にストレスに感じるようになった。
それならばと、ある時の引越を機に、家の中の至る所で使う収納ボックスを、同じラインのサイズ違いで揃え使うことにした。
こうしておくと、収納スペースの広さが変わったり、模様替えや配置換えをしたときでも、
LEGOブロックを組み替えるようにして、家中の収納ボックスをシャッフルすれば良くなった。
人の目に触れない場所で使うものではあるけれど、色や素材による統一感のおかげもあり、
お客様にちらりと見えてしまっても、小さなオトモダチの不意打ちによって収納庫の扉を開けられたとしても、気にする必要がなく、様々なストレスが減ったように思う。
どういう流れでそうなったのかは忘れてしまったけれど、
昨年の引越時に、引越業者の方と、このような収納ボックスの話しになった。
そして、話がダークセピア色に及ぶと、引越業者の方がダークセピア色は、ダンボールには向かい色なのだと教えて下さった。
ダンボールには古紙が使われているため、漂白をしなければ薄茶色のままである。
お客様の荷物を入れるものなので漂白をしても良いように思うけれど、
引越作業中にダンボールに付く汚れを目立たせないことと、
作業中の作業員に出来る限り荷物の重さを感じさせない配慮のために、あの薄茶色をしているのだそう。
仮に、引越荷物を梱包するダンボールを黒やダークセピア色といった濃い色に着色してしまうと、
短時間に、たくさんのダンボールを運ばなくてはいけない引越作業員にとっては、
もう、それを目にするだけで実際の重さよりも重く感じられてしまうというのだ。
だから、少々お値段がかかるけれど、引越業者の中には白いダンボールを使っている所もあるのだとか。
そうなのかと関心していると、バケツリレーをするかのようにして玄関先に次のダンボールが届けられた。
そのダンボールを抱えた作業員の方に、「これは」と背後から声を掛けられて振り返ると、
引越業者のダンボールではなく、私が個人的に購入したダンボールを使って梱包した1箱を抱えた作業員の方が立っていた。
改めて「これは、どこに置きます?」
そう尋ねられて、真っ先に出た私の言葉が「ごめんなさい!!濃い色ダンボール!」であった。
「ひと箱くらい、大丈夫です。」と爽やかに答えて下さったけれど、
「あ……、多分、全部で3箱あります。しかも、重いものを入れてます。」
「……楽勝です。」
ダークセピア色の収納ボックスを引っ張り出しながら、確か、そのような会話が行き交ったことを思い出した。
ダンボール。
私は、何となく、消耗品だから極力シンプルにしてあるのだろうと思っていたのだけれど、
実はその色が選ばれている理由がきちんとあった。
収納ボックスにしても、ダンボールにしても使う人に適した色、心地よい色というものがあるようだ。
巷には、“これぞ定番”という色の提案があるけれど、
誰かにとっての定番に自分を当てはめるのではなく、自分にとっての“これぞ定番”を
暮らしの中で、ひとつずつ見つけていくのも、楽しいことのように思う。
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