英国から友人が観光でやってきた。
やはり隣の芝生は青いのか日本の文化は興味深い、を連呼している。
子供の様に目を輝かせる友人を見ながら、
日本人が海外へ行って興味深い事に出会ったとしても、
心の中は別として、ここまでのオーバーリアクションにはならないな、と思いながら
友人の話に相槌を打っていた。
観光の途中で休憩がてら目に入ったカフェへと入る。
店内は芳ばしいコーヒーの良い香りに包まれていた。
コーヒーの香りは大好きなのだけれどコーヒーが苦手な私は手渡されたメニューから紅茶のページを探す。
友人はコーヒーを、私はロイヤルミルクティーを注文した。
店員が立ち去った後、友人が眉間にシワを寄せて言う。
「ロイヤルミルクティーって何?それにメニューにあったストレートティーって何?」
あー、そうだった、そうだった。
私はイギリスでその疑問に出会っていた事を思い出した。
日本では、お鍋を使って丁寧に紅茶を煮出して作るミルクティーのことを、ロイヤルミルクティーと呼ぶことがある。
「ロイヤル」と冠が付いているため、イギリスでもメジャーな、
寧ろ正式な紅茶の飲み方であるような印象があるけれど、この呼び方は日本だけのオリジナル。
きっと、味の濃い牛乳をたっぷりと使うので
上品でスペシャルな雰囲気を王室のイメージとリンクさせて名付けられたのかもしれないけれど、
イギリスで「ロイヤルミルクティー」と注文しても通じないのだ。
イギリスでは「ティー・ウイズ・ミルク」と言うとミルクティーが運ばれてくる。
そして友人が疑問を抱いた「ストレートティー」。
これもイギリスでは通じない。
日本で言う紅茶の「ストレートティー」は「ブラックティー」と呼ぶ。
紅茶の茶葉の色が黒っぽいことや、
イギリスの水で淹れられる紅茶は日本の紅茶とは違い黒みを帯びた色になる事から
ブラックティーと呼ばれているのだ。
更に、日本ではメジャーなレモンティーも、元はロシアから伝わった飲み方の様で
イギリスでは「ロシアンティー」と呼ばれたりしている。
常識とはある意味面白いもので、
「レモンティー」くらいならイメージで伝わるだろうと思うけれど、
これが全く伝わらなくて苦笑した事を思い出した。
そしてイギリスでは130年という長い年月、議論されていたことがある。
それは、ミルクティーを淹れる時、カップに注ぐのは紅茶が先か、ミルクが先かというもの。
日本人の私からしてみれば、美味しければどちらでもいいのだけれど、
私がイギリスに住んでいた頃も議論の最中で、
年配の方と紅茶をいただく場面では、「紅茶が先よ」、「ミルクが先よ」などと言われていた。
それも、2003年頃にミルクを先に入れた方が
タンパク質の熱変性が少なく美味しいということが化学的に立証されて決着がついたそうだ。
今回は私たちにとっても身近な飲み物、紅茶に関するちょっとしたお話しでした。