幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

お掃除ロボットに恋焦がれ。 

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お掃除ロボット。

私が長年恋焦がれているアイテムである。

年月が過ぎている話なのだけれど、

お掃除ロボットが世の中に登場したばかりの頃は

いま程リーズナブルではない家電のひとつだった。

奮発して買ってしまってもいいけれど、

当時はどこか楽をし過ぎているような後ろめたさも感じたりして躊躇していた。

楽をしたからといって誰に何を言われることもないのだけれど、

物言わぬもう一人の自分が何となく、

じーっと、こちらを眺めているような、そのような気がしていたのだ。

 

そんなタイミングで他の家電を新調することとなり、家電量販店へ行くことになった。

家電とは思えない造形美に搭載される最先端の機能は、

特段家電好きとは言えない私でさえも静かにテンションが上がる。

 

上がったテンションが引き金となり、

私の頭の中には恋い焦がれていたお掃除ロボットが浮かんだ。

自分の頭の中だけでは収まりがつかなかった私は、

お目当ての家電フロアへ向かう途中、お掃除ロボットの話をパートナーにした。

しかし、熱く語る私に向けられる視線は微妙な温度を含んでいた。

その上がりきらぬ微妙な温度の原因はなんぞや!

そう思った時にできた一瞬の間をついてパートナーが言った。

「それは、最近みた映画か、小説か、漫画にでも出てきたの?あ、昨夜見た夢の話?」

「ん?(私の話を聞いていたかしら?)いやいやいや……現実の話」

ここからしばらくの間、エスカレーターに運ばれながら若干嚙み合わぬ会話が続いた。

普段から空想話を繰り広げていたことがこのような形で仇となるとは。

しかし、このまま空想話として片づけられるのは気分のいいものではない。

これは何としてでも証明しなくては!と私の中で血が騒ぎ始めた。

「掃除機」と記されたフロアに降り立ち、私は一番近くにいた店員に尋ねた。

「お掃除ロボットは置いてますか?」

「はい、こちらへどうぞ」

キョトンとするパートナーの方を振り返りながら「ほらね」という視線を2、3度向けながら、

私は弾む足取りで店員の後ろをついて行く。

辿り着いた先で目にしたのは、

大きな囲いの中にペットの様に放し飼いにされたお掃除ロボットが

「疲れたよ~」などと言葉を発しながら、

人間によって、わざとばら撒かれたゴミを健気にお掃除する様子だった。

空想アイテムだと思っていたものが目の前に姿を現したとき、

人はこのような表情をするのか、と私には別の発見があった瞬間だった。

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あれから何年も経つのだけれど、未だ我が家にお掃除ロボットはいない。

楽をし過ぎているように感じてしまう後ろめたさにも似た感情は、

とっくに消えてしまっているのだけれど、

古株の掃除機が、「まだまだ若いもんには任せられん」と言わんばかりに健在なため、

掃除機の代替わりはもう少しだけ先になりそうなのだ。

恋焦がれている相手と出会える日を心待ちに過ごすのも、

そう悪いものではないのかもしれない。

そのようなことを思いながら、お掃除後のきれいになった部屋でほっとひと息つく穏やかな午後。

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