子どもの頃の話だ。
ダイニングテーブルでドレッシングボトルの裏に書かれている原材料を眺める父。
その横でお菓子のパッケージをくるりと裏返し、原材料を眺める私。
傍から見れば、その姿だけで「親子ね」と言われるようなシチュエーションだっただろう。
だが、家族内では、日常の中で頻繁に目にする、いつもの風景だ。
いつもの風景ではあるものの、家族と言っても感じ方は人それぞれ。
「そんなに真剣に原材料を見てどうするの?」
母が素朴な疑問を私たちに投げかけた。
「ん?」そんな気の抜けた声でも漏らしながら顔を上げたのだろう。
母は苦笑いしながら、「それ、楽しいの?」、「それって、何か意味があるの?」、
「私、何か変なものでも買ってきたかしら?」と思いつく限りのことを続けた。
「いや、こういうものが入っているのかと思ってね」と答えながら父と私は顔を見合わせた。
時々、思いもよらない材料が入っていることを見つけると、
「これが隠し味なんじゃないだろうか」と盛り上がったりもした。
それは、大人になっても変わらない光景で、
母はその様子を、いつものことだと横目で見ながらも、
「それ、楽しいの?私には分からないわ」と言っていた。
そのようなことを思い出したのは、家電量販店内に設置してあった日用品売り場だった。
普段は何も考えずにカゴ入れる洗濯槽専用の洗剤だけれども、
その日は2種類のそれを手に成分を見比べていた。
両方とも普段から使っているものだったけれど、
隣り合わせで陳列されている場に遭遇したことがなかったため、
私は、商品パッケージを替えたばかりの商品で旧タイプと新タイプがあるのだろう、と
勝手に決めつけ、そう思い込んでいたのだ。
しかし、この日。
「(何が違うのだろう。)」、そう思ったのは、
明らかに異なるものだと分かるくらい目立つように書かれている
塩素系、酸素系の文字が目に入ったからだ。
この手の商品、違いはあれど、どれも全て洗濯槽を洗って除菌してくれるもの。
これまた勝手に、そのように思い込んでいた私は結構長い時間、その場に立って居たのだろう。
見かねた店員が声をかけてきた。
なんでも、洗濯槽クリーナーには種類があり、
用途にあった使い方が必要だと言うではないか。
簡単にまとめると、
塩素系の洗濯槽洗剤の得意分野は「殺菌」なので、
汚れを落とすこともできるものの、その効果は酸素系ほどではないのだそう。
一方、酸素系の洗濯槽洗剤の得意分野は「汚れ落とし」。
もちろん殺菌も行ってはくれるものの、塩素系ほどではないのだそう。
だから、使い方のポイントとしては、
酸素系で汚れを落とした後に、
仕上げのお手入れとして塩素系でしっかり殺菌するダブル使いが良いようだ。
こまめに洗濯槽のお掃除をしている方であれば、
梅雨のような菌が繁殖しやすい季節は、
塩素系のもので殺菌に力を入れておくのもコツのひとつなのだそう。
同じ商品だと思って目に入った方を手に取り購入していた私は、
こまめにお掃除しているとはいえ、
どちらを、どの程度きれいに出来ているのか判断できなかったため、
両方を購入にダブル使いをすることにした。
わたくし、今でも成分表を見て思いを巡らせることが好きだという自覚がある。
ただ、確かに成分表を見ることは好きなようだけれども、
この癖、興味がないことには、あまり発動しないのだと気づいたある日のできごとだ。