先日、友人がペシャンコになってしまったダウンコート(以下、ダウン)の風合いをもとに戻す方法ってある?と尋ねてきた。
聞けば、お気に入りのダウンを自宅でお洗濯したら風合いが変わってしまったという。
お気に入りならクリーニングに出せばよかったのにと言うと、
以前、別のダウンをクリーニングに出して失敗した経験から、
自宅で水洗いができるダウンを購入しセルフクリーニングをしてみたのだけれど、
クリーニングに出したとき同様にダウンの風合いが変わってしまったのだそう。
実は私もセルフクリーニングをしてダウンを1着ダメにした経験がある。
だけれども、それは私が中身の羽毛の性質を理解していなくて、
適切なケアが足りなかったからだ、ということに後で気付いたのだ。
それからは、手洗いできるタイプのものは手洗いし、
クリーニングに出すべきものは出し、
クリーニングから戻ってきたダウンにはひと手間を加えてフワッと感を保つようにしている。
今回は、自宅で水洗いする際のコツや、ダウンの風合いが変わってしまった際にできること。
そのようなお話をと思っております。
|ダウンがペシャンコになってしまったとき、ダウンの中では何が起こっている?
ダウンがペシャンコになってしまったとき、
中の羽毛がどのような状態になっているのか、想像したことはありますでしょうか。
水洗いで濡れた羽毛は、濡れた羽毛同士で絡み合ったまま乾いていることが多いのです。
鰹節にお醤油をかけると、お醤油がかかった部分がペシャンコになりますよね。
あの状態のまま水分だけが蒸発した状態と言えばイメージしやすいでしょうか。
ダウンがペシャンコになってしまったときの多くは、
羽毛の隙間、羽毛同士の隙間がなくなっており、
空気を含ませられずにペシャンコになっているのです。
ということは、羽毛をほぐして空気を行き渡らせれば、
フワッとした風合いを復活させることができるのです。
|どのようにして羽毛をほぐすの?空気を行き渡らせるの?
【手揉みケア】
まず、お手持ちのダウンの表素材を傷めないように慎重に作業をすることを忘れずに、
ダウン内の羽毛をカイロをくしゅくしゅっと揉むときのようなイメージで優しく、
羽毛の羽軸や羽根を折ってしまわないように揉みほぐします。
一か所に羽毛が固まっていることもありますので、
揉みほぐしたら羽毛が均一に広がるようにダウンを大きく振ります。
少し時間がかかる方法ではあるのですが、
丁寧に揉みほぐすことで、羽毛にわずかに残っている水分を蒸発させることもできますし、
羽毛に空気を含ませることもできます。
この作業をしますと表生地にシワがつくこともあります。
このような時には軽くスチーマーをあてて表生地を整えた後、
ドライヤーや布団乾燥機などを使って水分を飛ばし、
ダウンを大きく振って羽毛を均一に整え、
しばらくの間はクローゼットの中には戻さずに、完全に乾燥させます。
【お洗濯時のコツ】
もし、お洗濯をし直す場合は、脱水を強くかけすぎないように注意し、
乾かす前にバスタオルなどで水分を吸い取るようにして脱水します。
乾かす際には平置きにして、時々裏返したり、振ってみたりしながら丁寧に乾かしますと、
手揉みケアが短時間で済み、表生地を必要以上に傷めることもありません。
【乾燥機ケア】
時間をかけずにダウンを復活させたい場合は、回転式の乾燥機を使うこともできます。
ダウンはファスナーやボタンをしっかりと留めて裏返しにします。
形を整えたら大きい洗濯ネットに入れ、ドライヤーボールと一緒に乾燥機に入れます。
私は6個から10個ほどのドライヤーボールを入れます。
低温で1~2分ほど乾燥させ、
足りないようであれば状態を見ながら乾燥時間を少しずつ延長します。
これは、羽毛に残っている水分を蒸発させつつ、
ドライヤーボールで羽毛を揉みほぐす仕組みです。
ダウンが短時間でふわっふわに膨らむのですが、
各ご家庭の乾燥機によって乾燥時の温度が異なりますし、
お手元のダウンの表生地や羽毛の種類、羽毛の配合などによって、
仕上がり具合や生地劣化や変色といったダメージの出方も変わりますので注意が必要です。
乾燥機を使うことができない羽毛以外の素材が含まれているダウンにも注意が必要ですので、
こちらは、どのような物もセルフクリーニングしている方向けの方法です。
私は数年に一度、羽毛のプロに羽毛布団の中身を丸洗いしていただき、
外側の生地を新調して新しいお布団に仕立て直していただくのですが、
その時の雑談から、このようなダウンのお手入れのコツのようなものを教えていただきました。
もし、セルフクリーニングをしていたけれどダウンをダメにしてしまったとガッカリされている方は、
ダメもとで試してみてはいかがでしょうか。
また、これからセルフクリーニングをする方も、羽毛の状態や仕組みを知っていれば、
気を付けるポイントも見えてきますので参考にしていただければ、と思います。
ふわっふわの暖かいダウンで、ぽっかぽかの冬をお過ごしくださいませ。