気分転換も兼ねて食器棚の中を掃除することにした。
こういう時、自分ルールを決めておかないと、
いつまで経っても掃除が終わらない、という事がある。
今日は食器以外の細々とした道具入っている場所を掃除して
ついでに道具のチェックとお手入れをすることに決めた。
季節の箸置きやコースターを一つずつ、一枚ずつお手入れをする。
単純な作業を淡々とこなしていく時間は気持ちが落ち着いて、心地好い。
ついでにお正月用の箸置きやコースターなども出し、
ハレの日用の塗りもののお盆やお椀も出して軽く磨いておいた。
盃やお猪口が入っている籠を覗き込むと「茶筅(ちゃせん)」の姿が目に留まった。
茶道でお抹茶を点てる時にシャカシャカ、シャッ、シャッと使う
小さな泡だて器のような、あれだ。
「(あぁ……最近、使っていない)」
茶筅を手に取り穂先を掌にあててシャカシャカっとお抹茶を点てる仕草をしてみる。
使えそうだけれども、お手入れされていない事が一目瞭然の私の茶筅。
久しぶりにお茶でも点ててみるか、と掃除そっちのけで
食器棚からお抹茶茶碗を取り出し、
キッチンでお抹茶を探すも肝心なお抹茶が見当たらない。
そう言えば、数日前に抹茶塩に使い、
残りは青汁の粉末に混ぜて、美味しくいただいたことを思い出した。
お抹茶は無いが、久しぶりにシャカシャカしたい気分は収まらない。
その時、私の目に入ったココアと、
何かの本で読んだ“ココアをお湯で溶く時に茶筅を使う話”が脳内でピーンと繋がった。
これは、やるしかない。
私はいつもより少し多めのココアをお抹茶茶碗に入れお湯を注ぐと茶筅を使った。
シャカシャカ、シャッ、シャッ。
良い音と共にココアの香りが鼻を擽る。
そこに、電子レンジで温めた牛乳を注ぎ、整える。
すると、どうだろう。
粉っぽさのない、舌触りの優しいココアができたのだ。
抹茶茶碗でいただくココアもなかなか良いではないか。
しばらく、はまりそうな予感がする。
という事は……牛乳を泡立ててもいいのでは?
やってみたい衝動を抑える事が出来るはずもなく、
温めた牛乳を泡立てでみると、ふんわりとした泡が出来上がった。
これを今度は少し甘めに作った紅茶に乗せてみる。
お腹は既にココアで満たされていたけれど、
こういうミルクティーも気分が上がっていいじゃないか。
日本の道具は万能で無駄がない、と思う。
派手さはないのだけれど洗練されている。
その日の夜、茶筅熱の冷めない私は、古くなった茶筅の使い道などを調べてみた。
茶筅の穂先を切りそろえて短くし、
ザルやスリおろし器などを洗う道具として使われる事が多い事を知る。
物を大切にする先人の気持ちや道具への愛情、知恵が垣間見えたような気持ちになった。
しばらく使っていない茶筅をお持ちの方、
茶筅の使い道はお抹茶だけではないようですよ。
もう一度、あなたの道具に愛情を注いでみませんか?
茶筅に興味を持たれた方は茶筅で美味しいココアやミルクフォームを作ってみませんか?
道具には色んな魅力が詰まっているようでございます。