幸せのレシピ集

cawaiiとみんなでつくる幸せのレシピ集。皆様の毎日に幸せや歓びや感動が溢れますように。

お椀とお椀がくっついてしまったら?グラスとグラスがくっついてしまったら?

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「あーぁ、どうして……」

夕食後のキッチンで私の声が尻すぼみになっていった。

右手に握りしめられた無駄に泡立っているスポンジと

蛇口から流れ出ている水の音が際立ち、

少し離れた所から耳に届く年末によくあるお笑い番組の笑い声は

私の心情には溶け込まず乾いたBGMのように感じられた。

 

誰しもささやかなこだわりの一つや二つあると思うのだけれども、

私のその一つは食後の食器の扱い方。

できる事なら食後のお皿は重ねたくないのだ。

潔癖症という類のこだわりではないので、

このようなことを言いつつ自分で重ねることもある。

よそ様のお宅でそのようなシーンに遭遇しても、それに対して思うことも特にない。

ただ、何となくその時々の状況に合わせた自分ルールが存在しており、

重ねられるか否かのジャッジメントを下しているようなのだ。

 

その日は年末の程よい疲れが油断を生んだのだろう。

私は普段は重ねることのないご飯茶碗と汁物椀を重ねた状態でシンクに置いていた。

ダイニングテーブルから今しがた運んだばかりのそれを洗おうと張り切ったことは

右手のスポンジの泡立ち具合を見れば一目瞭然。

汁物椀を掴むと重ねられたご飯茶碗ごと持ち上がった。

泡まみれのスポンジをポンッとその場で手放して両手でそれらを引き離そうともビクともしない。

そして、冒頭の「あーぁ、どうして……」。

 

過去にも何度かやっている。

この重ね合わせは絶対にしてはいけないと知っているはずなのに、

「つい、うっかり」は、いつだってその瞬間を見逃さない。

何も言わず、ただただ固い絆を強固にしていくお椀たち。

力ずくでも離れないというのならと、

お椀の隙間に食器洗い用の洗剤を垂らし滑りをよくしてみたのだけれど状況は変わらなかった。

あっさりと戦いを諦めた私はこのような状況を打開する知識に長けている友人に連絡をした。

正直、この状況を何とかしたいというよりは、

この状況を誰かと分かち合いたいという気持ちが強かったのだと思う。

その想いが通じたのか随分と久しぶりだというのに

電話に出た友人の第一声は、ハニカミ声で「何かお困りですか?」だった。

少し照れ屋な友人は久しぶりの連絡の時は決まって、こんな風にお道化て見せる。

それを、私は密かにいくつになってもカワイイやつめ!と思ったりもして。

 

状況を聞いた友人はお湯を張ったボウルにお椀の口を上に向けて浸すようにと言います。

この時、外側のお椀の口がお湯で隠れないようにとも。

言われるがままお椀を浸し、次の支持を求めると「そのまま」という指示。

数十秒経ったころ、もう取り外せるよと言うので、

そんなわけ……と言おうとした瞬間、

あれほど固い絆で結ばれていたお椀たちがあっさりと離れたのです。

お椀とお椀が密閉した状態で間の空気が冷やさると

圧力のバランスが変わりくっついてしまうのだとか。

これを戻すためにお湯に浸し空気を温めて元の状態に戻すという仕組みらしいのです。

 

この時季は暖かいお湯で食器を洗うことが多いので、

うっかり重ねたまま乾かしてしまったお椀やグラスのくっつきにも対応できるのだとか。

もし、食器やグラス類をうっかり重ねてくっつけてしまった時には、

チラリと思い出していただけましたら幸いです。

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