いい大人が、こんなの事を言うのもなんなのだけれども、私は病院嫌いである。
医療従事者の方々への尊敬と感謝の念はとどまることは無いのだけれど、
それとこれとは、どうしたって話が別になってしまうのだ。
だけれども、それなりの人生経験を経て、
半年に一度の的を絞った検診と年に一度の健康診断を
半分は強制的に、半分は自主的に受けるようになった。
昨年は一年を通して自分の環境が目まぐるしく変わった一年で
つい検診を後回しにしてしまい
年末に駆け込み検診をすることとなった。
今年は初めて行く検査機関だったので、
検査内容は然程変わらないと知りつつも、
どんな雰囲気の所なのか、どんなシステムなのか気になっていた。
10日程前に受診に関する資料が手元に届いた。
検査機関内の事は気にしていたのだけれども確認する暇もなく、
受診2日程前になって問診票を慌てて記入していた。
必要事項と機関内の写真などを確認し、その日となった。
緊張しつつ早めに到着し、受付を済ませるはずだったのだけれども
何の手違いか予約が出来ていないのだという。
「(そんなはずはない。こうして、私の手元に届いた検診書類があるのだから。)」
鞄から、がさごそと、書類を出して受付に差し出した。
気のせいなのか、その資料を初めて見るような表情の係りの人。
「(受診できなければ、もう一日時間をつくらなくちゃいけないのかな)」
そんな事を呑気に思っていると、
「あの~……」
とても言い難そう顔でその人が言う。
「こちらは、系列機関ではあるのですがここではないんです。」
「あ、そうなんですか?」
冷静に返す自分の声に、自分で少し驚いた。
内心は、
「(えっーーーーーーーっ!!!場所、間違えたの?!!私!???)」
と辺りを見渡しながら無駄にキョロキョロしてしまうような心境だ。
お手間をお掛けしたことをお詫びして、
場所を教えていただき、外へ出る。
私にはよくある事なのだ、場所を間違える、時間を間違える。
あってはならない事なのに、時々、やってしまうのだ。
だから、いつも約束の時間のかなり前に現地に到着するようなスケジュールで移動する。
この日も然り。
幸いにも間違えた検査機関からはタクシーで15分程だったので十分に間に合う。
ホッと胸を撫でおろし、タクシーを拾おうとするが今度はタクシーが捕まらない。
「(あー、そうきたか。焦ってしまっては忍び寄る不運の波の思うつぼだ。)」
焦りそうになる自分を、そんな風に思う事で落ち着かせつつ大きな通りへ出る。
そして、予定時刻5分前に検査機関へ到着したのだった。
私の場合は自分の不注意が招いたことなのだけれども、
このような予期せぬ出来事というものは、時々起こるものだ。
そして、ツイていない!と思って焦ってしまいそうになるのだけれど、
それは、「不運という名の敵」が罠を仕掛けてきたようなものなど思う。
その罠にはまり、不運の波に飲み込まれてしまうのか、
焦る自分を落ち着かせて不運の波を次のターンで切り離すのか。
どの道を行くのかは自分の手に委ねられている。
その日の私は、「不運という名の敵」の罠を断ち切り自分の道に戻る事ができ
心穏やかに年に一度の健康診断を受ける事ができた。
さすがに、師走の忙しい時期に丸一日を使って健康診断を受ける方は少ないのか、
受診者も少なく、例年よりもゆったりとした気分で。
とは言うものの、今回は近場だったから良かったけれど
電車移動しなくてはいけないような場所だったら確実に受診できなかったはずだ。
次からは、頂いた資料にはきちんと目を通そう、と
身長を測られながら思うのだった。
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