ある休日の朝、のんびりと遅めの朝食をとっていた。
ふと、箸置に目が向いた。
気が付けば、その箸置とも長いお付き合いになっていた。
「日常的に使うモノ」の楽しみ方にはふた通りあるように思います。
ひとつは、カジュアルなもの、旬のものを選び替えていく楽しみ方。
こちらはある程度使ったら新しいものに替えるので、
その度に流行りに触れることができたり、
新しいものを選ぶ喜びなどがあります。
もうひとつは、少々値が張るけれど末永く愛用できるものを使う楽しみ方。
モノの変化を「味」と呼び、移り変わる表情を楽しんだり、
迎え入れたときのままの状態を愛でる楽しみがあります。
どちらも、心が豊かになる日常の楽しみ方だと思うのです。
どこで、どのような楽しみ方を選ぶのか、
この選択も十人十色でなかなか興味深いもの。
私自身も自分のこだわりによってどちらの楽しみ方も取り入れます。
その両方を組み合わせて、
インテリアやテーブルセッティング、ファッションなどを楽しんでいるのですが
そのようなことを改めて思うと、
日常を楽しむ方法はいくらだってあるものだと感じます。
私は、季節や歳時、お料理の内容によって箸置を変える事が
日常の中での、ひそかな楽しみのひとつです。
心惹かれる箸置と出会う事は意外にも多いのだけれども、
心惹かれるたびに連れ帰っていたのでは箸置を持て余してしまうので、
リーズナブルなものであろうが、
少し値が張るものであろうが、
一生使いたい、それくらい心が動いたものだけを連れ帰ることを
マイルールにしています。
その中でもお気に入りの上位に入るものの中に
錫(すず)で作られた箸置があります。
錫(すず)素材は、酸化しにくくて抗菌作用が強い特性があるので、
食器類にも使われることが多い素材です。
日本では正倉院に錫(すず)製の宝物が収められているそうで、
歴史的にみても長い間、大切にされてきている素材。
その錫(すず)を純度100%で使って品物を作っているお店と出会ったのです。
富山県にある『能作』というお店です。
日本に古くからある模様、型を
現代の和洋様々なシーン、空間でも使えるようにアレンジした品物の数々。
その中でも、私は「箸置」にくぎ付けになりました。
純度100%の錫(すず)は、とても柔らかいので、
物によっては手で簡単に曲げることができるのです。
この箸置も使う時には自分で少しカーブをつけてから使います。
そのくらい柔らかいので箸置として販売されている商品の中には、
ピンをつけてブローチにしたり、
チェーンをつけてネックレスにしたり、
着物の帯留めにしたり、
アクセサリーとしても使えるデザインのものまであります。
シンプルで機能的で遊び心も忘れていない、
日本の職人技と心意気が詰まった
スタイリッシュな錫(すず)製品がたくさんあります。
機会がありましたら、錫の世界を覗いていてはいかがでしょうか?
関連リンク: