寝心地の良い枕を探し始めてから随分と年月が経っているのだけれど、未だに、これだ!という枕に出会えずにいる。
素材や手触りに拘ってみたり、専門家によって商品化されたものの中から良さそうなものを選んでみたり、原点回帰してみるかと長年愛され続けているようなもの使ったり、全ての拘りを捨てて手軽さ重視で選んでみたりと、とにかく様々な視点で選んでみている。
しかし、リピートしようと思えるようなものはなく、ここまできたらオーダーメイドしかないのではないだろうか、いや、枕ナシライフが一番なのではないだろうかなどと思いつつ、悪足掻きしているような状況である。
先日も、最近話題の枕はどのようなものだろうかと見回っていると、「眠り杉枕」という商品名に目が留まった。
「眠り過ぎ」にかけられていることが容易に想像できるネーミングセンスに興味が湧き、詳しく調べてみることにした。
すると、寝具会社ではなく磐城高箸というお箸などを手掛ける会社の枕だったのだ。
こちらの会社では、天然杉を育てる中で出る間伐材を使用して高級割り箸を作っている。
間伐材というのは、森林の中で木が密集しすぎないように、どの木にも栄養が行き渡るようにという目的で間引かれた木のこと。
間伐材と聞くと、粗悪素材だと思ってしまう方もいるようだけれど、決してそのような品質の素材ではなく、お野菜で言うところのスプラウトのようなものに近いように思う。
大きく育った木には大きな木が得意とする使い道や活躍の場があり、間伐材のように大きく育つ前に伐採された若い木には、若い木が得意とする使い道や活躍の場があるので、適材適所で使われているということである。
その間伐材を使って、高級割り箸を作られているのだけれど、作ったお箸の中には、お箸として必要な強度が足りずに検品に落ち、焼却処分されるものもあるという。
しかし、もともとは様々な良さを持った杉の木なので、こちらでは、お箸の検品に落ちたものや間伐材を細かく砕いて杉チップを作り、これで枕を作っているという。
杉の木が持っている癒しの香りと、チップになった杉の木のクッション性が相まって、寝心地良い枕に仕上がっているのだとか。
しかも、杉チップは水洗いすることができるので衛生面も問題がなく、使えば使うほどチップの角が取れてより心地良い寝心地の枕に変化していくそうなので、世界にひとつだけの、自分だけの枕に育てることができる商品のようである。
しかし、問題がひとつ。
それは、この枕に使われている杉チップは間伐材やお箸になれなかったお箸を利用して作られているため、杉チップの材料となるこれらが出でこない場合は作ることができないという。
いつでも好きな時に好きなだけ購入できるような生活に慣れすぎてしまっていると、いつでも購入できるというわけではないことにヤキモキしそうにもなるけれど、自然を壊してまで大量生産するようなことをせずに、自然の恵みも無駄にせずに使い切るこの枕、とても素敵である。
あとは、私に合うのか否かという点だけなのだけれど、候補のひとつに挙げておこうと思っている。
以前触れたお箸の話題は食べられるお箸で、今回はお箸が枕に。
自由な発想は新しい豊かさを運んできてくれるように思う。
※最後になりましたけれど、今回のお話に登場した杉チップが入った枕を作っているのは、福島県いわき市にある「磐城高箸」という会社です。
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