家中の窓を開けて流れ込む軽やかな風を感じていたのだけれど、風がピタリと止まったような気がした。
ベランダへ出てみると雲行きが怪しくなってきており、湿度の高さを思わせるような生温いぬわっとした空気が全身を包み込んだ。
薄っすらと漂い始めた雨の匂いを察知し、慌てて他のベランダに干していたお布団を取り込み、家中の窓を閉めた。
先ほどまで軽やかな風が感じられていたというのに、今度は一瞬にして室内がぬわっとした空気に包まれた。
エアコンを除湿設定にして、お気に入りのPUKKAのハーブティーを入れて、最近手に入れた時代物の小説の世界をしばし浮遊していた。
その中で何度も出てくる「忠実」という言葉。
時代背景の違いがあるとは言え、現代の世で耳にするよりもはるかにしっくりとくるその言葉の響きに、言葉もやはり時代を生きているのだなと感じた。
「まめまめしい」という言葉があるけれど、ほね惜しみせずに、怠けずによく働く様子や、まじめで、よく努めている様子、誠実で実意がある様子、などの意味を備えた言葉です。
この「まめ」は「豆」じゃなく「忠実」と書くのだと初めて知ったとき、私は心の中で静かに驚きました。
私の連想力の安易さが露呈してしまうのですが、「まめ」と聞けば、あの「豆」を思い描いていたため、「まめまめしい」も「豆豆しい、もしくは豆々しい」だと思い込んでいたのです。
しかし、正解は「忠実忠実しい」でした。
そして、「まめな人」は「忠実な人」と書きます。
元は「誠実で真面目な様子」を表す言葉で奈良時代から使われていました。
それが、平安時代入り、「真心を持ち、相手を思う」という意味で使われるようになり、鎌倉時代からは、「怠けずにしっかりと働く」という意味で使われるようになりました。
ですから「忠実」という字は「ちゅうじつ」とも読みますが、「まめ」とも読むのです。
そして、「マメ(忠実)な人」の「忠」には「真心」の意味が含まれており、「実」には「偽りがない」「誠である」という意味が含まれているのだそう。
これは私の勝手な言葉の印象なのだけれど、マメな人と聞くと、物事に細かい人なのかしら?という印象を少なからず抱いていた時期があったのですが、
「忠実」と書くという事を知った日からマメな人と聞くと脳内でマメ→忠実と変換されるようになり、抱く印象も少しだけ変わったように思います。
そのような事を思い出しつつ小説を読んでいたのだけれど、本を閉じ、冷めてしまったハーブティーをコクコクッと飲み干して窓の外へ目を向けた。
降りだしていたはずの雨はいつの間にか上がり、優しい日差しがベランダに差し込んでおりました。
あなたの今日に優しい日差しが差し込みますように☆彡