穏やかな気候の日は、昼夜を問わずガーデンテーブルへ移動し、お気に入りの一杯を口にする。
特別なことは何もしないけれど、自分だけの、自分のための、ちょっとした癒しタイムのひとつだ。
その日は、久しぶりにミントティーを淹れた。
亡き父が、摘みたての自家製ペパーミントで淹れてくれていたミントティーのようなフレッシュさには欠けるけれど、
乾燥茶葉で淹れたものも、なかなか美味である。
ミントティーのお供に選んだのは、非常食として備蓄してあった、缶に入ったマフィン。
そろそろ賞味期限が切れることに気付き、
非常時として口にする機会が無かったことに感謝しながらいただいた。
味やボリューム、食べるときの手間などにも問題がないことも確認できたため、
またひと缶、お守り代わりに買い足しておこうと思った。
肉厚そうに見える雲に覆われた空を眺めながら、
最後のひとくちをミントティーと一緒に味わった。
賞味期限間近のマフィンで、美味しく脳内エネルギーを補給した私は、
しばらく後回しにしていたことを思い出した。
それは、使用期限が切れている災害時のトイレキットだ。
使う機会無く使用期限が切れたことはありがたいことなのだけれども、
勿体ないからと大切に保管しておき、いざという時に使い物にならなかったでは本末転倒。
しかし、使わないまま処分するというのも、実践してみるというのも気が引けた私は、
そのような状態で、どうしたものかと時々思いつつ、数か月間、放置していたのだ。
マフィンの糖分が程よく脳に届いたのだろう。
餅は餅屋ではないか、製造元の方に聞いてみようとスマートフォンを手に取った。
複数のトイレキットを備えているのだけれど、
その中で偶然にも一番早く使用期限がきてしまったこの会社。
お手数をおかけしてしまって申し訳ないという思いが、
呼び出し音に刺激されるようにして緊張にすり替わった。
取り急ぎ、聞きたいことは二つ。
使用期限が過ぎても問題なく使うことができるのか。
他の用途はあるのか。
2人ほど電話の相手が変わり、商品担当者というような立場の方に辿り着いた。
結果はこうだ。
使用期限を過ぎたからといって急激に品質が落ちるということはないため、使用できないわけではない。
だけれども、使用期限を過ぎれば少しずつではあるけれど劣化が始まり、
本来の力をフルで発揮できる保証はないため、
出来る限り使用期限内のものを準備しておいていただきたいというもの。
しかし、立場上、古いものは早急に処分し買い替えてとも言い難くということだった。
他の用途に関しては、特にないとのことで今後の商品開発の参考にさせていただきますという回答を頂いた。
焦って買い替える必要は無いけれど、
使用期限に差を持たせるようなスタイルでトイレキットを準備しておけば、
いざという時に全部使えなかったというようなことは避けられるし、
一度に全てを買い替える必要がないため、購入時にかかる様々な手間も軽くなるようにも思う。
さて、用途……。
今回のキットは、水分を固めてニオイも封じ込める魔法の粉を使うタイプのものだったため、
生ごみ、特にニオイが気になる下処理時にでた魚介類の生ごみに振りかけてみた。
少量の粉が水分をぐんぐん吸収した。
ニオイは瞬時に消えるという感じではなかったけれど、
わりと早く、気付けばニオイが封じ込められていた。
このような二次使用が正しいかどうかは分からないけれど、
私の場合は、使用期限がきれたものは、とりあえずこのような使い方をしつつ、
水分を固める力やニオイを封じ込める力を観察してみようかと思っている。
“実践”してみれば、もっと分かることや感じられることもあるのだろうけれど、今のところ、その勇気はない……。
食品以外の非常用アイテムも、時々チェックしてはいかがでしょうか。
日常の中にいることができるからこその二次利用や味見だと思えた、ある日の午後でございます。
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