大掃除をしなくてはいけない場所は多々あるのだけれど、レターボックスの整理に手を付けた。
全ての作業に優先順位を付けるならば、多分これは下位に位置する作業である。
そのようなことを思いながらも黙々と手先を動かして仕分けしていると、古いクリスマスカードが目に留まり、その懐かしさから作業の手はピタリと止まった。
そのクリスマスカードの絵柄には、真っ赤なハーフパンツを穿いたサンタクロースが、トレードマークの赤い帽子をかぶりサーフボードに乗っていた。
別のクリスマスカードに描かれたサンタクロースも、半袖とハーフパンツを身に纏い、白と青のイルミネーションが飾り付けられたクリスマスツリーの前でバーベキューの串を手に、満面の笑みを浮かべていた。
他にも数枚のカードが出てきたのだけれど、それら全ての差出人は、オーストラリアに住む知人である。
このようなサンタクロースを初めて目にしたときの私は、知人の遊び心だと思い、その斬新なセレクトに思わず口元が緩んだのだけれど、
知人が言った「忘れてない?オーストラリアは南半球だよ」という言葉に、「あぁ、そうか!夏なのか!」と送られてきたカードを二度見したことがあった。
クリスマスと言えば、赤を基調に白を効かせた温かそうな衣装をまとったサンタクロースに、雪化粧の街並み、赤と緑の組み合わせが古典的なイメージだけれども、それは北半球に限ってのことである。
頭の片隅では分かってはいたけれど、私は生まれも育ちも北半球である。
閑散期にバカンスを楽しんでいるかのようなサンタクロースの姿を目にして、少しばかり複雑な気分になった自分に笑ってしまった。
オーストラリアが長い知人に聞けば、あちらのクリスマスは日本で言うところのお正月のような過ごし方をすることが多いようなのだけれど、
クリスマスツリーは暑くるしくなく、爽やかさが感じられる青と白を基調にした配色のシンプルなものが多く、クリスマスプレゼントはお年玉のようなものだという。
そして、皆で豪快なバーベキューを楽しむことも少なくないそうだ。
サンタクロースの装いについて、もう少しだけ付け加えるならば、あの赤い衣装を着て活動することに変わりはないようなのだけれど、こちらもポイントとなるのは、暑くるしく見えず、爽やかさが感じられる着こなしをすることのようだ。
そうそう、そしてもうひとつ。
私がいただいたクリスマスカードに描かれていたサンタクロースの相棒は、トナカイではなくカンガルーだったのだけれど、
これは流石にご愛敬だろうと思ったのも束の間。
知人の説明は、灼熱の太陽が降り注ぐ南半球のクリスマス時季に、体を冬毛でビッシリと覆われたトナカイはソリを牽くことが難しいため、オーストラリアでソリを牽くのはカンガルーのお役目だとのこと。
どこからどこまでが真実で、どこからどこまでがジョークなのか判断できずにいた私に知人はもうひと言、「全て真実だ」と言って笑ったように記憶している。
それでも、何となくしっくりとこない私に止めを刺すかのように教えてくれたクリスマスソングのタイトルは、『6匹の白いカンガルー』というもので、これもまたオーストラリアではクリスマスを盛り上げるポピュラーなクリスマスソングだといっていた。
日本で目にするクリスマスカードの絵柄のほとんどは北半球仕様ですけれど、どちらかで、爽やかな夏の装いをしたサンタクロースを目にする機会がありました折には、
今回のお話をちらりと思い出していただいて、南半球からやってきたサンタクロースと白いカンガルーをご堪能くださいませ。
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