ひとりで道を歩いていたら、ある飲食店の貼り紙が目に飛び込んできたのです。
思わず「ふふっ」と噴き出してしまったのですが、そのタイミングですれ違った女性の顔には、「この人、怪しい!?」と書いてありました。
そのことに運悪く気付き、恥ずかしさで頭の中がいっぱいになってしまった柊希が、本日もお届けしております。
お時間ありましたら、ちらりと覘いていってくださいませ。
その、思わず声に出して噴き出してしまった貼り紙の内容というのは、
「空腹こそ、最高の調味料です。是非、空腹の状態でご入店下さい。」というもの。
この「空腹こそ、最高の調味料」「空腹こそ、最高のご馳走」といったフレーズは、様々な受け取り方ができるけれど、
一番シンプルに考えて、飲食店の貼り紙としてアリかナシかと問われれば、「ナシ」ではないかと思うのです。
そこを堂々と貼り紙にするあたり、店主の攻めの姿勢が見え隠れしており、怖い物見たさで入ってみたいかも、と思ってしまった次第です。
この言葉、確かフランスの作家(※ミシェル・ピクマル氏)の著書の中にあったように思います。
むかしむかし、あるところに、食ツウで知られている王様がおりました。
この王様、周りからは食べるために生きているような人だと言われるくらい、食べること、食べるものに拘りがあったといいます。
あるとき、この王様は美味しいものを食べたい一心で、「最高の料理を作った者に褒美をやろう」と言い、数か月間に渡って料理コンクールを開催しました。
王様はこの間、凄腕料理人たちのスペシャル料理を食べ続けていました。
コンクールも終盤に差し掛かった頃、ひとりの老人が王様を訪ね、言いました。
「私の宿で、王様が召し上がったことがない美味しい料理をお出し致します。
お望みであればご案内いたしますが……」と。
早速、老人が言う宿へ向かう王様でしたが、馬で走り続けるもなかなか宿には着かず、
老人は、とにかく美味しい料理が待っていると言うばかり。
王様が空腹で動けなくなった頃、ようやく宿に着いたものの、キッチンに立つのは料理人ではなく案内人の老人だと聞き、王様は驚きます。
老人は、登ってくる途中で採ったキノコを使ってキノコオムレツを作り、王様に出しました。
これほどまでに、空腹の状態で食事をしたことがなかった王様にとっては、言うまでもなく、
そのキノコオムレツが、王様が今まで食べた料理の中で、最高に美味しい料理だったのです。
このお話から、「空腹こそ、最高のご馳走」「空腹こそ、最高の調味料」といったフレーズが生まれています。
空腹を経て食べ物を口にすると感謝の気持ちが湧くものですが、
食事だけに限ったことではないように思います。
家族や友人、恋人、仲間といった人との関係や、健康や仕事、お金などとの関係、
その他、日常の中で関わる全てのものに対して、
あって当たり前だと感じたり、もっと、もっと、と欲することだけに気持ちを持っていかれてしまうと、見えなくなるものがあるように思います。
求めることを少し止めてみる、お休みしてみることも、日々や関係性を美味しく調理する調味料になるのかもしれません。
それにしても、その日、私が出会った飲食店の貼り紙の真意や如何に!?と、謎は深まるばかりでございます。
今日も、口角をキュッと上げてまいりましょ。
良き日となりますように☆彡
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