待ち時間の手持ち無沙汰を埋めるべくネットサーフィンをしていると、素敵な画像が目にとまった。
その画像の出どころを探していると、様々なお料理レシピを紹介している外国の方のサイトに辿り着いた。
食器類のチョイスや盛り付けも素敵で、しばしサイト内を散策した。
レシピよりも目の保養目的が優勢だった私は、レシピには目を通さずにいたのだけれど、ふと目に飛び込んできたPANKOの文字に吸い寄せられてしまった。
PANKO、パンコ、パン粉。
そう、私たちが良く知る、パンを粉状に砕いて作られているアレである。
世界中でとまでは言い切れないのだけれど、私が暮らしていた英国で会ったお料理好きのマダムたちの中には日本のパン粉ファンが多くいた。
ホームパーティーのお手伝いスタッフとしてキッチンに入らせていただくと、「これ知ってる?懐かしいでしょ?」とPANKOと記されたそれを手渡されるのである。
PANKOはパン粉、もちろん知っているけれど、懐かしいでしょと言われても、どこをどう懐かしめばいいのか良くわからぬまま、一応愛想よく「懐かしい」と答えていた。
日本人が外国の調味料に惚れ込んで使うことと同じことなのだろうけれど、米粉ではなくパン粉である。
美味しいパンが豊富にあるヨーロッパにも呼び名は違えど、私たちがパン粉と呼んでいるものに近いものはある。
それなのに、わざわざ日本製のパン粉を使うのは何故だろうと素朴な疑問が湧いた。
聞けば、外国のパン粉は様々なパンを出来るだけ細かく砕いたもので、これで作ったカツは日本のパン粉で作ったものと比べると食感が硬く、時間が経つと油でベタッとすることがあるのだそう。
一方、日本のPANKOを使って揚げ物を作ると、衣に適度に空気が含まれてソフトな食感であるにも関わらず、サクサクとした食感とパン粉の香ばしさが残っており、時間が経ってもベストに近い状態に保たれるというのだ。
当時の私は、そのような熱弁を前に、パン粉とはそのようなものではなかとでも思っていたのだろう。
「PANKOは日本生まれの食品じゃない、知らないの?」と続いた。
「ん?そうなの?」と言うリアクションを返すと、「信じられない……」とオーバーリアクションで驚くのである。
だから、日本のスーパーでは数種類のパン粉が並んでおり、用途に応じたパン粉を選ぶこともできると言うと使い比べたいと興奮気味に言うのである。
あちらで購入すれば早いのだけれど、当然輸入品なのでパン粉にこのお値段!?という値が付けられているため、日本から送ってもらう荷物の中に数種類のパン粉を詰め込んでもらった記憶がある。
その後、そのパン粉をどうしたのか忘れてしまったけれど、パン粉は日本生まれの食品で、その品質は世界レベルであることは、私の記憶にしっかりと刻み込まれている。
そのようなことを思い出しながら、そのお料理レシピのサイトを眺めていたのだけれど、その方が愛してやまない調味料リストの中には、しっかりと「PANKO」の名が記されていた。
しかも、「I love PANKO.」と絶賛である。
ハイクオリティーのものに慣れすぎている私たちには、今一つピンッとこないことだけれど、パン粉のサクサクを味わえることはハッピーなことのようでございます。
パン粉の何かしらに触れる機会がありました折には、今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/