今夜は普段よりも星が見えるなと空を仰ぎながら家路を辿っていると、
スズムシだろうか、マツムシだろうか、秋の虫の声が辺りに響いていることに気が付いた。
つい、往来する車のエンジン音に気をとられ、拾えていなかった虫の声。
長月に残された時間を指折り数え、
夏が過ぎると時の経過がグッと早まるような気がして、
もうすぐ10月か、と少しばかり胸の奥がざわついた。
10月は神無月(かんなづき、かむなづき)と呼ばれていますが、
出雲大社のある出雲地方では神在月(かみありつき)と呼ばれています。
皆さんご存知の通り、
旧暦の10月は日本全国にいらっしゃる八百万の神様たちが
出雲大社で行われている神様会議に出席するために、
地元を離れると考えられていたことが由来です。
出雲大社に祀られているのは大国主神(おおくにぬしのかみ)と言って大地を司る神様です。
古事記に残されている詳しい物語や、
10月(旧暦)に神様が集まる理由などは今回は割愛しますが、
大国主神には約200人近くの子どもがいたため、
その子どもたちを日本全国に派遣し、国をまとめておりました。
その子どもたちが一年に一度だけ出雲大社の大国主神の元に里帰りをし、
その年に起きた出来事の報告をしたり、翌年の相談をしたり、
人と人とのご縁の話や農作物の出来やお天気など様々な話をしていたのです。
久しぶりの里帰りですから、お仕事の話の後は盛大な宴が開かれ、
互いを労いあったり、再会を祝ったりしていたのかもしれません。
この、大国主神の子どもたちの里帰りに
他の神様たちもついていくようになったと言われています。
このような話題が出た時に、
10月(旧暦)は出雲地方以外の地は神様不在なのだからお参りに行っても無駄なのかしら?
という素朴な疑問が湧きませんか?
しかし、心配ご無用です。
ほとんどの神様が出雲へ行ってしまいますがお留守番をしている神様がいるのです。
にっこりと愛らしい笑みを浮かべながら鯛をかかえて釣り竿を手にした、
あの商売繁盛や五穀豊穣の恵比寿様です。
ほとんどの神様が出雲へ出張しますが、
恵比寿様は出張している暇がないほど、実りの秋は大忙しです。
その場を離れられないのであれば、お留守番も頼みますよ、
と他の神様に頼まれたのかどうかは定かではありませんが、
神無月も恵比寿様が各地の人々を見守ってくださっています。
秋のご旅行などで出雲地方以外の地でお詣りをする際には、
ちらり、恵比寿様のお顔を思い出してみてはいかがでしょうか?
お姿は見えはしませんが、にっこりと満面の笑みを返してくださるかもしれません。