日本では、太陰太陽暦を使っていた時代があります。
月と太陽の動きを使い科学的に割り出し、
少しずつ生じるズレは閏年を入れて調整する、高度な暦だったようです。
気候も時代と共にその姿形を少しずつ変えつつありますが、
植物の成長を、じっくりと観察してみると旧暦に沿っていることも多いのだそう。
日本の風土に合った暦でしたが、
時代が変わり、西洋暦を含め、先人たちによって作られた
今で言う旧暦と呼ばれるものを用いるようになります。
更に時を経て、太陽暦であるグレゴリオ暦へと改暦し、現在に至っております。
毎月触れている和風月名は、この先人たちによって作られた旧暦のお話でございます。
本来であれば旧暦は、日本で生活する私たちにとって、
より季節を身近に感じられる暦のようにも思います。
11月は霜月(しもつき)と呼ばれておりますが、
旧暦と現在のグレゴリオ暦では少々時期が異なるため、
先人たちが見ていた景色は、今の12月上旬から1月上旬頃の景色でございます。
肌で感じる季節感や見える景色という視点では、少し先の季節のお話となりますが、
これから訪れる少し先の景色を想像しつつ、
和風月名から広がる世界を覗いていただけましたら幸いです。
霜月は読んで字のごとく「霜が降り出す月」という意味も含まれておりますが、
10月の神無月を「上の月」と呼ぶことから、11月を「下の月」とし、
「しもつき/しもづき」と呼ぶようになったとも言われています。
他にも秋の収穫物を神様にお供えし神楽を納めて感謝の気持ちを伝えるお祭りが行われていたこともあり、
「食物月(おしものづき)」「神楽月(かぐらつき)」などと呼ばれていたのだそう。
この「食物月(おしものづき)」が変化し、「しもつき/しもづき」と呼ばれるようになったという説もあります。
他にも、旧暦で季節を区切る際、1月から3月を春とし、4月から6月を夏とし、
7月から9月を秋、10月から12月を冬とするのですが、
11月は冬の真ん中にあたることから仲冬(ちゅうとう)と呼ばれることもあります。
仲冬の候(ちゅうとうのこう)といった時候の挨拶などで使われることがありますので、
意外と、お仕事絡みの文書で目にする方もいらっしゃるかもしれませんね。
そして、10月は皆さんもご存じの通り、神様たちが出雲大社に集まるため、
出雲大社辺り以外の土地では「神無月(かんなづき)」と呼ばれますが、
11月になると「神様が出雲から帰って来る」ということで
「神帰月」「神来月」と呼ばれることもあります。
こちらは、季節の景色ではなくストーリーを楽しめる和風月名です。
どのような呼び名も当時の景色や生活のひとこまや、
肌で感じた季節感を切り取っているものですが、
私が特に気に入っているのは「霜月」と書いて「そうげつ」と呼ぶ和風月名です。
霜が降りた日の夜、その霜に月光が反射する冬の景色を表している呼び方なのですが、
すぐに溶けてしまうであろう霜と月光のコラボレーションが放つ美しさ、
という視点にハッとさせられます。
私がすぐに思い出せる別名は、このくらいですが、
他にも冬の景色を切り取った11月の和風月名がたくさんあります。
共通して知られているもの、その土地だけで使われてきたものとあり、
それらを見聞きしますと、私たちは知らないはずなのに、
どこか懐かしいような気持ちにさせられる景色と繋がることができることもあります。
和風月名に触れる機会がありましたら、
現在、私たちが肌で感じている季節よりも少しだけ先の景色を想像しながら触れてみてはいかがでしょうか。
今日も心豊かな時間をお過ごしくださいませ。