日常の景色の中に赤や黄色に色付き始めた木々の姿を見つけ、いつからだろう、とハッとした。
人の心の変化も自然と同じで見えはしないけれど、重ねられる日々の中で日々と同じように重ねられている。
様々な感情が何かしら、形として表に現れるのは突然のように感じられることもあるけれど、
その背後には表現する側の日々の小さな小さな積み重ねがあるように思うのです。
秋の紅葉も植物たちの小さな小さな積み重ねがあってこそなのだと私が知ったのは
最近、たまたま植物図鑑を覗いたときのこと。
緑色の葉が赤や黄色に色付くきっかけは、アントシアニンによるものだのだそう。
そう、あの目に良いとされていたり、アンチエイジング効果があると言われているポリフェノールの一種です。
だけれども、このアントシアニンは常に葉の中にあるわけではなく、
秋から冬にかけて葉の中に少しずつ蓄えられた糖類と紫外線が影響し合うことで作られていきます。
アントシアニンが増えれば色付くのかと言うとそれ程単純なことではないようで、
アントシアニンの量と気候による様々な条件が良い塩梅で重なって初めて色付き始めるそうなのです。
私は、夏が過ぎて涼しくなれば色付くのでしょう、とある意味軽く捉えていたのだけれど、
紅葉には植物たちの小さな積み重ねと自然の神秘がありました。
そして、この秋の景色を楽しむ紅葉狩りも秋の醍醐味のひとつですが、
ふと「紅葉(もみじ)」と「楓(かえで)」は何が違うのかしら?などと思われたことはありませんか?
私にとって、頭にぼんやりと浮かんでは消える素朴な疑問ではあったものの、随分と長い間、放置しておりました。
そのような私に「紅葉(もみじ)」と「楓(かえで)」の方が痺れを切らしたのか、解決の時が不意に訪れたのです。
先日、観葉植物を専門に扱っているお店へ入ると
入り口側のスペースに小ぶりな卓上盆栽が並べられておりました。
盆栽と呼ぶには少々違和感を覚えるほどに、とてもスタイリッシュな鉢植えでつい吸い寄せられてしまいました。
その中に、「紅葉(もみじ)」と「楓(かえで)」のネームプレートがあったので
思い切ってお店の方に尋ねてみることにしました。
お返事は至ってシンプル。
「紅葉(もみじ)」と「楓(かえで)」と分けてあるけれど植物の分類としては同じものなのだそう。
ただ、盆栽の世界では葉っぱにできる切れ込みの深さ、浅さ、数によって
しっかりと区別されるのだそう。
簡単に説明すると、葉っぱの切れ込みが深くて多いものを「紅葉(もみじ)」と呼び、
葉っぱの切れ込みが浅くて少ないものは「楓(かえで)」と呼ぶのだそう。
私は盆栽には詳しくないのですが、
盆栽の世界は繊細で奥深いものなのだろうなと感じたところです。
お店の方のお話によると、
このように細かく区別するのは世界を見ても日本くらいなので、
英語では総じてメープルと呼ばれていますが、
葉っぱの切れ込みが深くて多いものはジャパニーズメープルと呼ばれることもあるのだそうです。
秋が深まり始めた今日この頃。
植物たちの小さな小さな積み重ねと自然の偶然から出来た素敵な色を
ほんの少し足を止めて、あなたの目で味わってみてはいかがでしょうか?