わたくし、昔話の主人公たちが仲良く暮らすパラレルワールドを描いている某CMがお気に入り。
つくり手の意図や狙いが細部にまで反映されており、
15秒の中に在る奥行きと広がりの虜なのです。
昔話に登場するキャラクターたちに命を吹き込む役者の方々も見事。
その日も、心の中でそのような事を思いながら手を止めてCMに見入っておりました。
ふと、随分と長い間「桃太郎」という作品に触れていない気が致しまして、
大人になってから手に入れた自分好みの装丁が施された一冊を
収納庫から引っ張り出したのでございます。
そして、私の目は一枚の挿絵に留まりました。
皆さんもご存知の通り、桃太郎は鬼退治に行き無事に鬼を退治します。
そして、冷静に考えると突っ込みポイントでもあるのですが、
心優しき桃太郎は退治した鬼たちから金銀財宝をお土産にいただいて(奪い取って)帰還します。
※少々悪意が感じられなくもない表現は遊び心ということで……。
様々な本に登場する、その時の様子を描いた一枚には、
それはそれは立派な珊瑚が描かれているのです。
諸説ありますが桃太郎は室町時代に生まれたおとぎ話だと言われております。
この時、既に珊瑚に金や銀同様の価値があると認識されていたことが分かる挿絵です。
子どもの頃は挿絵全体を見て全体の雰囲気から「宝物」だと認識していたのですが、
時が経った今、あの挿絵の中に描かれた珊瑚を
貴重な財宝だと感じられるくらいには、わたくし、大人になったようでございます。
珊瑚は日本だけでなく世界中で長い年月愛され続けておりますが、
唯一、日本でのみ、3月の誕生石として親しまれています。
今回は桃太郎が繋いでくれたご縁から、「珊瑚」が日本人に愛されている背景を
簡単ではありますが覗いてみたいと思います。
珊瑚は天然石の中にその名を連ねておりますが生きものですので、
正確には「石(鉱物)」ではなく、真珠とともに有機物の宝石として扱われております。
珊瑚の主産地は地中海で、日本へは中国を経由して入ってきました。
室町時代に桃太郎のおとぎ話に登場した珊瑚は、
親から子(特に娘)へ贈ると良い宝石として人気があり、
加工された簪や帯留めは大切にされて代々受け継がれたのだとか。
珊瑚は地中海地域や中国でもお守りとされていましたが、
日本でも赤い色は災厄除けとされていたこともあり、
お守りとしても受け入れられやすかったのかもしれませんね。
江戸時代になると、中国からの輸入珊瑚だけではなく、
土佐沖で採取されるようになったこともあり、
それまで以上に女性たちを魅了したようです。
また、磨り潰してお薬の材料としてもつかわれておりましたので、
おとぎ話の世界だけに止まらず、美しい宝石としてだけにも止まらず、
日本人にとって馴染み深い自然の恵みとなりました。
現在も珊瑚は語呂あわせしやすい言葉ですので、
珊瑚から産後を連想し出産のお守りや、出産後の贈り物としても人気です。
また、珊瑚から数字の35を連想し、結婚35周年の記念石として贈られます。
石言葉は「厄除け」「幸福」「長寿」「成長」などがあり、
パワーストーンとしての効果としましては、
生命力を高めたり、厄除けなどの効果があり、
母親の様な深い愛情をもった石だと言われることが多いですね。
自然の恵みには限りがつきものですが珊瑚も非常に厳しい状況が続いております。
珊瑚は1cm成長するのに約50年ほどかかると言われますが、
年々、採取できなくなりつつある状況であるにも関わらず、
残念なことに乱獲する人たちもいます。
特に真っ赤な珊瑚は採取困難で希少価値も年々上がっております。
もし、お手元に珊瑚をお持ちであれば、大切に楽しまれて下さいませ。
先人たちがおとぎ話にまで登場させるほど人々を魅了してきた珊瑚です。
おとぎ話や珊瑚に触れる機会がありましたら、
今回のお話をチラリと思い出していただけましたら幸いです。