日本の四季は素敵。
冬のこのピリッと身が引き締まる冷たさも悪くないじゃない。
このような気持ちがわたくしの中には確かに存在しております。
確かに存在してはいるものの、人は身勝手なようでございます。
「(ここまで冷え込んでしまったら外へ出るのを躊躇ってしまうじゃないの)」
と、わたくしは身勝手に思ったりもするのです。
この振り幅広い感情と今年の冬を楽しんでいるわけなのですが、
ここまで冷え込んだ夜はアツアツのお鍋が美味しいに違いない。
そう思って、その日の夜のメインにと、ちり鍋の用意をしておりました。
ちり鍋は、味付けをしないお湯に魚介類とお好み野菜、きのこ類を煮て、
ポン酢醤油とお好みの薬味で頂く鍋料理ですが、
わたくしは出汁の旨みを加えるのが好みなので、
昆布とあごのミックスお出汁でちり鍋を楽しみます。
その日もお出汁の準備をしていたのですが、ある日の出来事を思い出したのです。
皆さんは、この「ちり鍋」どうして「ちり」と名付けられているのかご存知でしょうか。
随分と遠い記憶なのですが福岡で「ちり鍋」を食べる機会があったのですが、
その時に、お店の方に伺ったことがあるのです。
お店の方のお話ではアツアツのお湯の中に薄切りにした生のお魚を入れると
ちりちりっとお魚が縮むのでその様子から「ちり鍋」と呼ばれるようになったのだと。
わたくし、「なるほど」発しつつ、
薄切りということは、きっとお刺身か何かだったのだろうけれど、
初めに新鮮なお刺身を鍋に入れた方ってチャレンジャーだな、と思ったわけでございます。
それを、当時一緒に食事をしていた友人たちに呟いたところ、
お店の方、私たちに背を向けられていたはずなのですが、
しっかりと聞いておられたようで次にお料理を運んできてくださった際に
私の解き放った素朴な思いに答えて下さったのです。
ちり鍋が生まれたのは明治時代以降だったそうです。
外国からも多くの外国人が来日していた時代です。
生魚を食べる文化を嫌う彼らが、
何とか安全に美味しく生魚を食べられないだろうかと考えて始めた調理法が
現在のちり鍋だという説があるのだということを教えてくださいました。
確かに、お刺身、焼き魚、煮魚を食べる日本人は
わざわざ、お魚を味のしないお湯で煮て食べようとは思わないですものね。
人はピンチに立たされると
思わぬ知恵が出てくるものなのだなと思った説でございました。
こうして誕生した鍋料理を観察した日本人は、
お刺身をちりちりにして食べるから「ちり鍋」と名付けたのです。
日本には他にも、
水菜のはりはりっとした瑞々しい歯ごたえから名付けられた「はりはり鍋」。
お肉を湯でじゃぶじゃぶ(しゃぶしゃぶ)と洗うようにして食べるから「しゃぶしゃぶ鍋」。
と、食材名を使わずに名付けられた鍋料理があります。
まだまだ寒い日が続いております。
今夜は遊び心が見え隠れしているネーミングのお鍋料理で、
ポカポカに温まってみてはいかがでしょうか。
暖かい夜になりますように☆彡