インターネットの普及に伴って様々なSNSが登場し、誰でも自由に思いを言葉に乗せ、画像に乗せ、世界中に発信できるようになりました。
このような状況を思うと今はある意味、言葉が自由自在に変化しやすい世の中なのかもしれません。
先日、電車内のほかほかに温められた座席でまどろんでおりましたら、私の向かいに2人組の方が腰かけました。
私の意識が完全に遠退きかけた、その時。
私の耳に届いたのは「忘備録」という言葉でした。
皆さんは使いますか?「忘備録」という言葉。
本来、「忘備録」は間違いで正しくは「備忘録(びぼうろく)」です。
自分が忘れた時に読み返して思い出せるように記しておいたものを指すお馴染みの言葉です。
しかし、意外にも「忘備録」と記す人、発する人も多く、ネット上でもよく目にされるのではないでしょうか。
ですから、実際に自分が記そうとした時に「どちらだったかしら?」と迷う方も増えつつあるようなのです。
確かに、忘備録という文字の並びを見ると、忘れた時の備えとして記したもの、というイメージが湧きますので一見、「備忘録」よりもしっくりくるような気も致しますものね。
意味を理解して使っているからこそ、このような事も起こってしまうという、言葉が持つ七不思議のひとつかもしれません。
特段意識することなく使っている言葉の中には、「備忘録」と「忘備録」のように紛らわしい言葉もあるものです。
使う度に、スマートフォンで確認するのも良いのですが、正解と同じように解き放たれている間違いの中から正解を手繰り寄せなくてはいけません。
そのような時には、言葉を二字熟語として見てみてはいかがでしょうか。
これは、私が子どもの頃に、「わたし、言葉が大好きなの」と言いながら満面の笑みで様々な話をしてくれてた恩師に教えていただいた言葉の見方です。
「備忘録(びぼうろく)」の「備忘」を「動詞+目的語や補語」の文字順から作られている言葉だと思って見るのです。
「備える+忘れることに(忘れてしまうシチュエーションに)」→「忘れることに備える(忘れてしまった時のために備える」=備忘禄。
このルールを「忘備録」に当てはめると、「忘れる+備えることを」→「備えることを忘れる」となり、チグハグになっていることが分かるのではないでしょうか。
正しくは「備忘録」ですが、「忘れた時の備えとして記したもの」という語順での造語としては「忘備録」も違和感がありませんので使われているというのが現状です。
ただ、辞書などには「備忘録」のみが記されている場合が多く、「忘備録」単独での記載はありません。
「忘備録が」記載される際も、備忘録の補足として登場します。
スマートフォンのメモ機能やメール機能を使って文字を確認することがあるかと思いますが、
漢字変換がスムースに行えない言葉はうろ覚えの言葉であったり、間違って使っている可能性もあります。
そのような時には、言葉本来の姿を覗いてみてはいかがでしょうか。
新しい何かを知るチャンスなのかもしれません。
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