ふらりと鮮魚店を覗いてみたのです。
この日もイキイキとした魚や切り身が並べられており、創作意欲を掻き立てられておりました。
頭の中に浮かんでくるメニューを絞れずにいると、
ふと、冷蔵庫に冷やしておいたワインが浮かび、
これ幸いと、ワインに合う白身魚でカルパッチョを作ることにしました。
鮮魚店を見回し、さくどりされた鯛に手を伸ばしたのですが、
触らずともプリッとした身の引き締まり具合が伝わるそれに、テンションがあがりました。
「さくどり」というのは、冊取り、柵取りとも書かれ、木取りと言われることもあるのだけれど、
お刺身やお寿司にするために切り分けられたお魚の身のこと、切り分け作業のことを言います。
立派な白身を手にした帰り道は脳内が一人3分間クッキング。
カルパッチョは浅葱とブロッコリースプラウトをあしらって和風だろうか?
そうなると、シメは鯛の残りで鯛茶漬けだろうか?
などと、鯛をどう美味しく食べようかということで頭がいっぱいです。
ひと通りメニューが頭の中を巡ったのでしょう。
ほっと一息ついたところで、カルパッチョと言えば……と私の思考は次の世界へ旅立ちました。
カルパッチョは皆さんもご存知の通りイタリア料理の一皿です。
今では様々な食材で自由に楽しむことができ世界中で楽しまれていますが、
もとは、薄切りにした牛肉にチーズやオリーブオイルをかけて食べるお料理でした。
これは、とある食事制限のあるお客様にも食べていただけるようにと、
その時のイタリア人のシェフが考えたレシピなのだそう。
そして、このカルパッチョという名は、
ルネッサンス期の画家ヴィットーレ・カルパッチョ(1455頃〜1525頃)から名付けられております。
ヴィットーレ・カルパッチョが描く絵には赤が使われることが多く、
この赤色にも彼の個性を感じることができます
イタリア人シェフが生み出した薄切りにした牛肉にチーズやオリーブオイルをかける料理は、
お皿の上で新鮮な牛肉の赤がパッと目を惹きます。
この一皿が画家が描いた赤が効いた作品に色合いと似ていたこともあり、
画家にちなんで、この一皿はカルパッチョと名付けられたのだそうです。
ちなみに、画家のカルパッチョの作品は、このような作品です。
私はイタリア料理のカルパッチョから画家のカルパッチョさんの作品と出会いました。
日常の中には様々な出会いの瞬間が隠れています。
カルパッチョを召し上がる機会がありましたら、
そのような名をした画家がいたことをチラリ、思い出してみて下さいませ。
ほんの少しだけ、目の前の世界に奥行きが増すのではないでしょうか。
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