先日、「ソクパスどうしますか?」と初めての問いを投げかけられた。
そう問われて、正しく答えられる方がどのくらいいるのだろうか。
私の答えを待ちながら、目の前に立つ店員である彼女の作業の手も止まったことから、
私が購入した品物についてのことだということは直ぐに分かったけれど、
私の頭の中は「ソ・ク・パ・ス・・・・・・?」以降、何も浮かんでこなかったため、「ソクパスって何ですか?」と聞いてみた。
すると、彼女は靴下が左右バラバラにならないように閉じてある、金属製のクリップのことだと教えてくれた。
その日は、購入後に直ぐ履く方が多く、レジで全てを取り除いて欲しいという依頼が多かったため、尋ねてくれたのだそう。
すぐに履く予定もなかったため、ソクパスを付けたままの状態で梱包していただいた。
つま先や履き口に付けてあるソクパス、これまでに何個ほどのソクパスを外してきただろうか。
確かに、左右バラバラにならないように挟んで固定することで、様々な問題が、シンプルに解決するのだろうけれど、
購入後にひとつずつ取り除く作業は、地味に面倒だと思ったことも数知れず。
ゆえに、あの小さな物体の名前にまで気が回っていなかったことに、今更ながら気が付いた。
そもそも、どうしてソクパスなのか。
ソクパスは、もともとアメリカで「パッチャー」と呼ばれていたのだそう。
パッチャーの由来までは追っていないのだけれど、パッチャーが日本で使われるようになったとき、
当時の人たちの目には、パッチャーを広げたときの形が、円や円弧を描くときに使われるコンパスに似て見えたのだそう。
ソックス(に付ける金具)+コンパス(に似ている)というところから、ソクパスと名付けられたのだそう。
遅れ馳せながら、あの金属製クリップの名前を知ってからと言うもの
「ソクパスどうしますか?」の問い待ちをしているのだけれど、
残念ながら、そのような問いを投げかけてくれる店員に出会えていない。
そして、もう二度とそのような問いかけを受ける気配を全く感じないため、
ここに、こうして書き記すことにした次第である。
そう言えば、過去にも似たような出来事があった。
問いかけの内容は忘れてしまったのだけれど、お魚を捌いていただいたときだったと思う。
その時に、お刺身やお魚からでる水分、ドリップを吸い取るシートには、ドラキュラマットという名があることを知った。
知名度は、それほど無いように思うのだけれど、
ドリップを吸い取る様子とドラキュラが血を吸う様子を重ね合わせた、遊び心感じる名付けに、顔がにやけてしまった記憶がある。
ドラキュラマットも、あの時以降、発する機会がないけれど、
世の中に出回っているものには、例えそれが小さくても名前が存在しているのだ。
そのような当たり前のことを思いながら、自宅でソクパスを取り除いた夜だ。
ソックスを新調した際には、ソクパスの名を、
ドリップシートを目にした際には、ドラキュラマットの名を、ちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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