私は自宅で上白糖やグラニュー糖を一切使用しないため、
自宅に常備している甘味料は使用頻度の高い順に、
ハチミツ、甜菜糖、オリゴ糖、メープルシロップ、和三盆といったラインナップ。
底をつきそうなハチミツがあったため、空き時間にふらりとハチミツ専門店を訪ねた。
お店へ入ると顔なじみの店員が小さなスプーンでハチミツを掬って
クラッカーと一緒に差し出してくれた。
パクリと口に運んだ時の幸せな気持ちに夢中になり、
自然とミツバチからの恵みであることを忘れそうになるのだけれど、本当に有難い。
ハチミツは、生きもの命を奪うことなく
ミツバチや植物から自然の恵みを分けてもらっている食品だけれども、
ミツバチ一匹が一生涯をかけて集められる蜜の量はわずかティースプーン一杯程度。
それを思うと、先程ひと口で食べてしまったハチミツ、
もう少し丁寧に味わうべきだっただろうか、と思うことも珍しくはない。
この日もそのようなことを思いながら店内のハチミツを見ていると、
『3月8日はミツバチの日です』と書かれた可愛らしいミツバチの形をしたポップが目に入った。
もしやとは思ったのだけれども念のため店員に3月8日である理由を尋ねてみた。
少しだけ恥ずかしさを含んだような笑顔で店員が「語呂合わせです」と答えた。
続けて「シンプルで覚えやすいですしね」と、
フォローとも言えないようなフォローをする私に気を遣ってくださったのか、
店員が「あ!」と小さく声を上げた。
そして、私はミツバチ社会の厳しさを知ることとなったのだ。
私が持っているミツバチのイメージと言えば、
巣とお花畑を何度も往復して蜜を集めているイメージで、
蜜の質に関して何かを思ったことは過去、一度も無かった。
しかし、話を聴いてみるとミツバチたちが集めた全ての蜜が
そのままハチミツになっているのではないようなのだ。
蜂の巣の中に運び込まれるのは良質の蜜のみということで、
蜜は蜜でも質の悪い蜜を持って帰ったミツバチは
その蜜を巣の中に持ち込ませてもらえず、蜜そのものを却下されることもあるのだとか。
そう言えば、蜂の巣のすぐ側で上下に飛び続け、
一向に巣の中に入っていかないミツバチを見たことがあるのだけれど、
あれば蜜質チェックを受けているところだったのだろうか。と言いこぼすと、
「その可能性はありますね、彼らは頑張り屋さんでガッツあるんですよ」と店員。
私たちが口にしているハチミツはただ単純に集められた花の蜜なのではなく、
ミツバチチェックを合格することができた一級品、ということのようだ。
家に帰ってハチミツを口にするときには、
やはり幸せな気持ちに夢中になって彼らのガッツを忘れてしまうのだろうけれど、
彼らのガッツを称える意味も込めて、ここに書き記しておきたいと思う。
明日は、ミツバチの日。
テレビやラジオで見聞きされたりハチミツを召し上がる際には、
彼らのガッツに拍手を送ってあげてくださいませ。
【注意】妊婦さんや子どもも飲んだり、食べたりできる「はちみつ」ですが、取り扱いには十分に注意し、1才未満の乳児には与えないようにしてくださいませ。