我が家のベランダには、野鳥のお客様が度々遊びにやってくる。
可愛らしかったり、凛々しかったり、賑やかだったり、時に騒がしさが過ぎることもあったりと、人付き合いにも通じるものを薄っすらと感じたりもしている。
彼らは悪さをするわけではないため、自由気ままに過ごしてもらっているのだけれど、彼らのことだけは見過ごせずにいる。
ここで言う彼らというのは番いのハト。
どうやら我が家のベランダを巣作りに適した場所として認定したようなのだ。
一人暮らしを始めた頃、私は自宅ベランダだというのにも関わらず、ハトとの領地争いに負け、ベランダをしばらくの間、明け渡した苦い過去がある。
その間、ベランダ側の窓は開けることができなくなり、洗濯物を干すこともできなくなった。
自分の手には負えないと判断した結果、父の手を借りてハトからベランダを奪還することはできたものの、ベランダでハトの鳴き声や羽音がする度にベランダに駆け寄る癖がついてしまっている。
そして現在、我が家にある全てのベランダが一組のハトに狙われているのだ。
彼らは、一旦、目を付けた場所は何としてでも手に入れようとする。
諦めが悪いと言えばいいのか、根性があると言えばいいのか、出来る限りの対策を試してみてはいるけれど、自分で追い払う以上の効果がなかなか得られていない。
もちろん、卵を産む準備で命がけなのだから当然のことだとは思うのだけれども、私も生活空間をそう簡単に明け渡すことは出来ない。
そんなこんなで、ここ数週間ほど、早朝から陽が落ちるくらいまで、ハトがやってきたらベランダへ飛び出す、というやり取りが続いている。
数日前は彼らが強硬手段に出て小枝を運び出した。
外出していた隙にサラダボウル1杯分ほどの小枝で、ふんわり素敵な寝床が出来上がりつつあった。
一瞬、なんて上手に作るのだろう。
どこでこんなにも柔らかで触り心地の良い小枝を見つけたのだろう、と感心しかけて頭をブンブンと振った。
作業を無駄にしてしまうようで心苦しくもあったけれど心を鬼にしてそれらを撤去した。
その日は、このやり取りを何度か繰り返し、我が家にとってはただのゴミでしかない不要な小枝がゴミ袋に随分と溜まった。
そのゴミ袋を眺めながら、ちょっとした罪悪感と共に、生きるってエネルギーを要するのだなと思う今日この頃だ。
明日は、どの方角のベランダに現れるのやら……。
皆さんもハトの巣作りにはご注意あれ。