季節柄でしょうね、外国人観光客の姿をよく目にします。
先日の出来事なのですが、
デパートの一角に居合わせた外国人観光客の女性たちからは、
潔いほどの「私たち、サマーバケーション中よ」というオーラが全身から放たれており、
私の目には、その光景が少々眩しく映りました。
小さなガイドブックと店内を交互に見ている女性たちのことが気になりつつも、
知らない土地で、お目当ての何かを自力で探しだすのも旅の醍醐味。
それを易々と奪い取ってしまっては申し訳ないと思い、その場を後にしようとしました。
すると、その中の一人が、
このLucky Bagが欲しいのだけれども、どこにあります?と
小さなガイドブックを指さし、尋ねてきたのです。
Lucky Bagとは日本で言うところの福袋なのだけれど、
このショップ限定で何か出しているのかしら?とガイドブックを見せてもらうと、
お正月感溢れる福袋の写真とともに、
『中身を見ることはできないけれど、
どの袋にも、お値段以上のアイテムが多数入っており非常にお得。
しかも、中身が分からないスリルを味わうことができる上に、
中身を皆で分け合って楽しむことも出来るハッピーになれるアイテム』だと紹介されていました。
ただ、時期に関する情報が一切記載されておらず、
女性たちは期待に胸を膨らませ福袋売り場を探しているようだと推測できました。
日本発祥の福袋が海外でも人気だという話を
様々なメディアを通して見聞きするけれど、現状を肌で感じた瞬間です。
「福袋」は、元々福の神である大黒様が
打ち出の小槌や米俵と一緒に抱えている大きな袋のこと。
この袋の中には、品物ではなく、幸運や幸福のなどの類が入っており、
大黒様がやってくるとその袋から福を取り出し、分け与えてくださると言われています。
このありがたい名を付けられた、日本のお正月名物のひとつでもある福袋。
その起源には諸説あるけれど、
どれも老舗の呉服屋(現在の大手デパート)が福袋を販売していた説が有力です。
江戸時代に、その年にでた端切れを袋に詰めて売り出したところ大評判となったのだとか。
また別の呉服屋からは、端切れの詰め合わせの袋の中に、
金の帯が入っている「当たり袋」なるものも混ぜ込まれていたようで、
当時の人たちは、運試しも兼ねて福袋を楽しんでいたといいます。
現在では、中身の見える福袋も増え、事前に中身を選べるものが主流になりつつありますが、
福袋の習慣がない外国の方々にとっては、
損得だけでなく「福袋」本来の、中身が分からないワクワク感そのものも
立派な楽しみのひとつのようです。
観光客の彼女たちに、
この時期は、大々的に福袋が売られているわけではないということを伝えると、
一気に残念モードのスイッチが入ったのが分かりました。
立ち去り難い雰囲気をエイッと振りきって、私はその場を後にしたのだけれど、
たまには、損得抜きにして、
本来の福袋というものを純粋に楽しんでみるのもいいのかもしれない、
と思った先日の出来事でした。