品種によっては7月頃から目にする梨。
口に含めばジュワッと広がる甘い果汁の虜になる方も多いのではないでしょうか。
他のフルーツのように長期保存ができないため、鮮度がものを言うフルーツでもあります。
水分と食物繊維を豊富に含むため女性に嬉しいフルーツですが、
ビタミンの含有量が少ないと私が知ったのは、数年前のことでした。
フルーツと聞けばビタミンが豊富というイメージがあった私にとっては、
少々意外な梨の事実でした。
そう言えば、この果実が梨と呼ばれるようになった語源には様々な説があります。
皮を剥いた中身の白い様子から「中白(なかしろ)」と呼ばれ、
これが後に短縮されて「なし」と呼ばれるようになったというものや、
梨の芯の部分には酸味があることから「中酸(なす)」と呼ばれ、
後に「なし」となったというもの。
他には、泥棒に入られないように、
「うちに泥棒に入っても盗むものは何も無いですよ」という意味を込めて、
家を建てる際に、梨の木を使用していたこともあるのだとか。
語源に関しては、このような説が有力とされておりますが、
私が「梨」と聞いて真っ先に思い浮かべるのは語源ではなく、
梨が持っている「有の実(ありのみ)」という別名。
以前、お仕事をご一緒した方のお祝いの席で、このような出来事がありました。
大勢で食事をしデザートが運ばれてきました。
器の中のそれには、食べるのを躊躇してしまうくらい繊細な飾り切りが施されておりました。
そして、お品書きに視線を落とすと「有の実(ありのみ)」の名が記されていたのです。
当時の私は、梨にこのような別名があることを知らなかったため、
「これは何だろう」と期待に胸を膨らませながら、それを口に運びました。
「ん、梨?」私以外にも同じように感じた方がいらっしゃったようで、
有の実という名の品種か何かだろうかという会話が聞こえてきました。
すると、お店の方が「梨」は「無し」に通じてしまい、
あまり良い響きではないためお祝いの席でお出しする際には
縁起のよい「有の実(ありのみ)」という別名を使っていると教えて下さいました。
それからしばらくして、贈り物にフルーツの盛り合わせを選ぶ機会があったのですが、
用途を尋ねられ、お祝いごとだと言うと、
その中に添えてくださる目録のようなものに「有の実(ありのみ)」と記して下さったのです。
そして、この時に「有の実」という別名を知って間もないことをお話したところ、
「梨」は「無し」に通じることから、自宅の庭に植えることを避ける人がいた一方で、
自宅の鬼門の方角に敢えて「梨」を植えて「鬼門無し」とし、
縁起の悪い場所を無くすこともあったようだということを教えていただきました。
食べ慣れたフルーツにも様々な顔、様々な世界への扉があるようです。
今年の「梨」の旬は、もうしばらく続きます。
梨を召し上がる機会がありましたら、
今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。