どんよりとした空と冷たい空気が相まって、空が凍ったような顔をしている。
その氷のような空は、辺りの音や時間まで凍らせてしまったかの、
行き交う車の音も普段の勢いを無くしたようだった。
なかなか温まらないカラダにヤキモキし、キッチンでホットワインを作ることにした。
ワインとハチミツ、セミドライのナツメとクコの実にシナモン、
そこに、いつものレモン果汁を少々。
本当は、クコの実をたっぷりと入れたいのだけれど、
栄養価が高くパワフルな食材なので、ぐっと堪えて3粒ほどに。
フレッシュなフルーツを入れて作れば爽やかさも増すところなのだけれど、
今の私の体がそれを受け付けないので、口にできるもので、あるものでつくるホットワイン。
お鍋の中を覗き込みながらアルコールを飛ばし、沸騰する前に火を止める。
色を楽しめる透明のカップに注いだら、いざ、ベランダへ。
体を温めたいんだか、冷やしたいんだか分からないけれど、
手にしているカップで暖をとりつつガーデンチェアでひと息。
吐く息もカップから立ち上る湯気も白いけれど、
あっという間に辺りの冷たい空気に溶け込んで消えていく。
ホットワインが喉から奥へ降りていきながら体の芯を温めてくれる心地よい感覚。
「温かい」と「冷たい」が混ざり合う感覚にドキドキしてしまうのはどうしてだろう。
冷たい場所で口にする温かい飲み物や食べ物。
暖かい部屋で口にする冷たいアイス、その他いろいろ。
人はとても欲張りであるのと同時に、
何かしらの矛盾を胸の内側にそっと忍ばせているからなのかもしれない。
もっともな風なことを思いつつ、
初めに浮かんだ例えが全て食べ物なのは、ご愛敬ということにしておこうと思う。
ふーっと息を吹きかけながらホットワインを少しずつ味わっていると、
空の隙間から顔をのぞかせた太陽が凍った空を溶かし始めた。
空と雲は、あっという間に色味を取り戻し、車の往来の音も普段の勢いを取り戻した。
冬には冬の、景色と体温と感触がある。
春が待ち遠しい今日この頃だけれども、残り少ない冬のそれらを存分に味わいつくそうと思う。
いつだって、生きられるのは、今、この瞬間だけなのだから。
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