ドラッグストアのレジで福引の箱を差し出された。
予想外の展開に少しドキドキしながら箱の中に手を差し込んだ。
「よーく掻き混ぜて下さいね」と乗せ上手の店員に促され、箱の中を数回、グルグルとかき回し、
手折りの紙を引っ張り出して店員に差し出した。
「すごい!トランプですよ!」と大きな声と満面の笑みで、
マジシャンが使っていそうなクラシカルな絵柄のトランプを手渡された。
当選品の一覧のようなものは見当たらず、
そのトランプが1等だったのか、5等辺りだったのか私には分からなかったけれど、
店員が解き放った興奮とスペシャルスマイルにつられた私も満面の笑みでその場を後にした。
どういう訳だか私は、子どものころから“くじ運”に恵まれる機会が多く、
くじを引く番になると「当たってしまう、どうしよう……恥ずかしい」と思ったこともあった。
当時の私は何を恥ずかしと感じていたのだろうか、そのようなことを思い出しながら帰宅した。
トランプに夢中になる年齢でもないのだけれど、久しぶりだったこともあり、
真っ新なトランプを全て、ダイニングテーブルの上に並べてみた。
以前、トランプに登場する人物にはモデルがおり、
トランプに収められている姿やアイテム、顔の向きなどには、
意味やエピソード、歴史などが含まれていることに触れたことがあるのだけれど、
前回とは少し異なる視点から補足すると、このような興味深い話もある。
トランプの起源に関しては諸説あるのだけれど、
トランプは、占いに使用するタロットカードの原型だとも言われている。
もちろん、代替できるものというわけではないのだけれど、
現在でもトランプ占いのようなものがあり、タロットカードのような使い方をする方もいる。
どうして、このような使い方ができたのか、できるのかと言うと、
4つのマークは、季節と星座を表していると言われているのだ。
クラブマークは、春と火の星座(おひつじ座、しし座、いて座)を表し、
ダイヤマークは、夏と地の星座(おうし座、おとめ座、山羊座)を、
ハートマークは、秋と水の星座(うお座、かに座、さそり座)で、
スペードマークは、冬と風の星座(ふたご座、てんびん座、みずがめ座)という風に。
更に、トランプに使われている赤色は、日の出から日の入りまでの昼を表し、
黒色は、日の入りから日の出までの夜を表していると言われている。
そして、トランプの枚数も興味深い数が並ぶ。
4種類のAからKまで13枚のカードがあるけれど、
これは、それぞれの季節の13週を表しており、
52枚のカードは、1年間が52週間であることを、
12枚の絵札は1年が12か月であることを表していると言われている。
当然、全ての数字を足していくと364になるのだけれど、
トランプにはジョーカーとエキストラジョーカーの2枚のジョーカーが含まれてワンセット。
この1枚のジョーカーを1としてトランプに加えると365となり1年間の日数となり、
もう1枚のエキストラジョーカーは、閏年の1日だと言われている。
そしてAのカードだけ取り出して並べてみるとスペードのAだけマークが大きいのだけれど、
これは、イギリス政府がトランプに税金をかけていた当時、
税金が納められたことを証明するために、
スペードのAにスタンプが押されていた名残だというのだ。
現在のようにトランプのデザインが多様化してくると、
本来のトランプに込められているストーリーをどのように盛り込んでいるのか、
それとも完全に無視した状態で新たなデザインを作ったものなのか、
そのような視点から、作者のこだわりに触れてみるのも面白いのではないだろうか。
物言わぬトランプだけれども、様々なメッセージを発信しているので、
トランプに興じる機会が減った分、
機会があれば、大人ならではのトランプ話を少しずつ、と思っております。
その際にはちらりと、覘いていただけましたら幸いです。
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