待ちきれずに湯呑に出してしまった薄いお茶を急須に戻しながら思う。
緑茶の香りは、どうしてこうも人の心をすーっと落ち着かせるのだろうかと。
茶葉は、お湯で淹れた際に溶け出す成分と茶葉に残ったままになってしまう成分がある。
その両方に栄養があることから、しばしばお茶は、
飲むだけではなく食べた方が、栄養を丸ごといただくことができて良いと言われている。
先人たちも、茶葉は、お茶として飲むだけではなく、食べていたと言うのだから、
医療技術や栄養学などが現代ほど発達していなかった時代の風習や習慣も侮れない。
私は時々、茶葉をミルで粉砕し、自家製のタレや調味料、衣、その他に混ぜ込むことがあるのだけれど、
気まぐれゆえ、先人たちのように、茶葉の栄養を丸ごといただいている、と言えるまでには至っていない。
そう思うと、食材に限らず、目の前にあるものを目一杯に使い切ることは、意外と難しいことのように思う。
そう言えば、何かの本で目にしたのか、タイ料理屋の店主に聞いたのか、
その辺りの記憶は曖昧になっているのだけれど、タイには「噛み茶」というお茶があるという。
「茶」と名が付けば、私たちはゴクゴクと飲むお茶をイメージしてしまうけれど、
こちらは、食べる発酵食品でミアンと言う。
ミアンは、噛んだ時に茶葉から出てくる苦味を味わうもので、
食後のお口直し、今で言うガムや歯磨きのような役目の他にも、
お客様にお出ししたり、供物としてお供えしたり、
お茶に含まれているカフェインの効果を利用して、
眠気覚ましや栄養ドリンクのようなものとしても利用されているという。
噛みながら味わう、という点に違いはあるけれど、
用途は、私たちが愛飲しているお茶やコーヒーなどと大差はないように思う。
この噛み茶、作り方は日本の漬物や韓国のキムチなどに似ていて、
まずは、大きくなった茶葉を摘み取り、蒸し器でしっかりと蒸しあげるのだそう。
これを、壺にぎっしりと詰め込んで塩と水を加え、半年から1年ほど寝かせたら出来上がり。
そして、このミアンの特徴は、乳酸菌が含まれているそうなのだけれども、
この乳酸菌が免疫力を高め、風邪などの予防にも良いということで、
日本でも注目されつつあるという。
日本でミアンにお目にかかれる機会は無いように思うけれど、
もし、味わう機会があるのなら是非、試してみたいと思っている。
思ってはいるのだけれど、結局のこところ、
日本式のお茶に慣れきっている私にとっての「お茶」は、やはり、
急須で淹れる、お馴染みのお茶なのだろうけれど。
そのようなことに思いを巡らせながら、濃い目のお茶で一服する至福のひとときだ。
もし、噛み茶・ミアンにお目にかかる機会がありましたら、皆さんも一服いかがでしょうか。