先日、出先で旬のお刺身をいただく機会があったのですが、
お刺身に負けないくらいの瑞々しさを解き放っている黄色い小菊が2輪も添えてあり、
嬉しくなった柊希でございます。
お刺身に添えられている小さくて可愛らしい菊、
安全なものだということも、食用だということも、
そして、食用菊として生産してくださっている方がいらっしゃることも皆さんご存知かと思います。
それでも食べ終わったお皿にポツンと残されることが多い食用菊なのですが、
先日、「正直、どう扱っていいのやら……」という声を耳にしました。
こちらでは、お刺身に添えられている“つま”や“けん”のお話をさせていただいたことがありますが、
今回は、その続編として食用菊のお話を少し、と思っております。
いつも食用菊には手を付けずにいると仰る方は、よろしければ覘いていってくださいませ。
この菊は、江戸時代ごろから食すようになったそうなのですが、
時代と共に苦味が抑えられ、食べる部分の花びらを大きくするといった品種改良が重ねられてきました。
お刺身に添えられている食用菊は、
大場や穂紫蘇、海藻類などと同じ「「妻(つま)」と呼ばれる部類のもので、
飾り改め、薬味のようなものだと思っていただくと良いかとしれません。
よく目にするのは、黄色い菊と淡い紫色をした菊だと思うのですが、
黄色い菊は、苦みが少なく、食感はスプラウトのように柔らかく、ほんのりと甘いため、好き嫌いが出にくいかと思います。
そして、淡い紫色をした少し大きな菊は、水菜のようなシャキッとした食感と、
キリッとした、爽やかな香りが特徴で、こちらは菊に慣れている方好みかと思います。
菊を避ける方の多くが、花を丸ごとパクリと食べるものだと思っていることが多いのですが、
食用菊は、花びらを食べます。
食べると言っても薬味ですので、手を使っても構わないのですが、
醤油皿の上で花びらだけをガクから抜き取り、お醤油に浮かべます。
お刺身をお醤油につける際に、花びらが数枚、勝手にお刺身にくっついてきますので、そのままいただきます。
真っ黒いお醤油に鮮やかな花びらが浮かぶ様子は、目で見ても楽しいものに変わり、
味は、驚いてしまうほどの変化はありませんが、ほんのりと甘みが添えられ、
お刺身というメニューに、風情がトッピングされます。
彩りや風情だけなら食べる必要はないじゃない、と思われた方がいらっしゃるでしょうか。
もちろん、この菊には嬉しい効果、効能と呼べるものも含まれています。
まずは、菊には食中毒を防ぐ効果があります。
植物の葉や花びらには、殺菌成分が含まれていることが多いため、
日本では古より、植物の葉や花びらを他の食材と一緒に食したり、添えたり、
食材を包むものとして使うという文化がありますが、食用菊もその中のひとつですね。
お刺身は生ものであるため食中毒を心配することがありますが、
菊の花には、毒物を解毒する成分を増やすことを得意とする成分が含まれているため、
これからの季節はとくに、おすすめの薬味です。
他にも、筋肉の緊張をほぐして目の疲れを緩和させたり、
糖質を代謝するときに大量に必要となるビタミンB1。
細胞を錆びさせて、美容と健康の両方からダメージを与える活性酸素というものがありますが、
この活性酸素を抑える働きを得意としているビタミンE。
といった栄養素と一緒に、神経をリラックスさせる香り成分も含まれています。
もし、ご自宅で召し上がるお刺身に食用菊が添えてあったなら、
一度軽く水洗いし、試しにお醤油に浮かべて召し上がってみてはいかがでしょうか。
もちろん好き嫌いはあるかと思いますが、仰け反ってしまうほどの衝撃的なお味ではないので、
“はんなり菊醤油体験”を楽しんでいただければと思います。
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