仮想通貨の話題を見聞きする機会が少しずつ増えてきている。
今はまだ、不安要素があり安定感に欠ける部分もあるけれど、様々な視点で見ていると、
バッサリと切り捨ててしまうには惜しい、あらゆる可能性を秘めたもののようにも思う。
そのようなことを、ぼんやりと思いながらテレビを点けると子どもの頃に聞いていた、懐かしいメロディーが耳に届いた。
懐かしさを感じるモノの中には、いつぞやかの記憶の欠片が眠っていることがある。
仮想通貨に意識が向いていたからだろうか。
引き出された、いつぞやかの記憶は、幼き頃に祖母から聞いた
「夜中にお金を数えると泥棒がやってくる」という、古より日本で語り継がれている言い伝えだった。
当時、何をきっかけにしてそのような話を交わしたのかまでは、記憶に残っていないけれど、
当時の景色や景色を包む空気感が、じわりと脳内に浮かび上がってきた。
「夜中にお金を数えると泥棒がやってくる」から、「夜中にお金を数えてはいけない」という言い伝えは、江戸時代に生まれたもののようだ。
当時、夜な夜な数えられるほどのお金を所持している人と言えば、商人だ。
彼らは、家族や使用人が寝静まったことを確認し、お金を数えていたという。
しかし、当時のお金は紙幣でも電子マネーでもない小判をはじめとする硬貨。
防音設備が乏しい当時の民家で数えれば、
金属同士がぶつかる音が、部屋に、家中に、そして外まで響き、
所持している金額が知れたり、お金があることのアピールになったりと、
泥棒に資産状況を安易に知らせて呼び寄せ兼ねない。
このような状況から、「夜中にお金を数えると泥棒がやってくる(から、夜中にお金を数えてはいけない)」という言い伝えができたという。
今は夜中にお金を数えたところで、その情報が外に漏れることは無いため、
笑い話のように扱われてもおかしくない言い伝えだ。
とは言っても、今はまだ、お金という現物があるから、言い伝えも想像し、当時の人たちの生活や気持ちを察することができるけれど、世の中が完全に仮想通貨にシフトしてしまったら。
言い伝えが言わんとしているシチュエーションを想像することができず、内容もいまひとつ理解し難く、
時代が違うからという突っ込みさえもできぬまま、この言い伝えは、人知れず消えていくのかもしれない。
そうやって既に消えてしまった言い伝えも多々あるのだろうと思いながら
懐かしいメロディーに聞き入った。
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