ニットのふわりとした柔らかさを心地良いと感じる季節になった。
季節が深まっていくにつれ、その温かさに頼り切り、ニットの柔らかさも当たり前になるのだろうけれど、
今はまだ、久しぶりのそれを、十分に感じられる貴重な時季だ。
私は生地フェチ、縫製フェチな所があり、お洋服やお着物を手にすると、デザインよりも先にそれらに目を通すことが多い。
店頭でそのような事がバレてしまうと、少々面倒くさい客だと思われてしまいそうな気もして、
その辺りを悟られてしまわぬよう、細心の注意を払いつつ生地や縫製具合を確かめる。
先日、ふらりと立ち寄ったショップで素敵なバージンウールを使ったコートを目にした。
「バージンウール」とは、羊から初めて刈り取られて、初めて素材として使われる羊毛のことなのだけれども、
再生した羊毛ではないため、羊毛本来の油分が良い働きをしてくれるのだ。
雨や風にも強い素材なのでコートやアウトドアウエアに使用されることもあり、
とてもしなやかで柔らかく、肌に優しいのが特徴だ。
そして、汗や汗による湿気を吸収してくれるけれど、さらっとした着心地をキープできるため、
外は寒いけれど室内でニットを着ると暑すぎて困るような場合でも、心地よく着ることができる点も、好まれるポイントだろうか。
ウールと一口に言っても、数千種類ほどあるそうなので、
様々な理由を元に、巷でブームになるウール素材があるけれど、
ブームやランクに左右されるだけではなく、
自分に合ったウール素材や、用途に合ったウール素材を探すのも、
ウールの楽しみ方のひとつなのかもしれないと、思うこの頃である。
ウールは、ちょっとしたお手入れで、見た目や持ちの長さが変わるように思う。
私たちが、髪の毛を水洗いだけで済ませ続けるのと、シャンプーとトリートメントを使ってのお手入れを続けるのとでは、
髪質に差が出てくるのと同じような感じだと言えばイメージしやすいだろうか。
動物の「毛」が使われているため、このお手入れの差が、ある程度、見た目にも反映される。
しかし、ウール素材は、お洗濯を失敗してしまうと、フェルト状になるため、注意が必要である。
過去に、私の失敗談を目にした方もいらっしゃるかもしれないけれど、
大人サイズのニットが、冗談抜きで、手のひらサイズ、縫いぐるみサイズのニットに変身してしまうのだから。
特別、気に入っているニットであれば、クリーニングに出すのが安全だけれども、
かといって自宅でお手入れできないというものでもないため、
セルフクリーニングできるようになるのも悪くはないように思う。
せっかくなので、シンプルな方法を簡単に。
【1】ニットは、丁寧にたたんで洗濯ネットに入れます。
【2】人肌よりも温い、ぬるま湯を洗面シンクに、たっぷりと張って、おしゃれ着用の洗剤を溶かします。
【3】洗面シンクにニットを入れ、ニット全体の繊維の奥に洗剤を溶かしたぬるま湯を行き渡るように、優しく、ゆっくりと押し洗いをします。時間にして15秒から1分程度で十分なのですが、時間を気にするよりも、ぬるま湯をニットに行き渡らせることがポイントです。
【4】シンク内の水を抜き、洗剤を洗い流したら、きれいな水をたっぷりと張り、ニットを浸したら、繊維の奥に含まれている洗剤液を押し出すようなイメージで、押し濯ぎをします。お水を変えて2回ほど。
【5】新しいお水に、柔軟剤か髪の毛用のコンディショナーを溶かし、ニットを浸します。毛をコーティングするように軽く押し、軽く濯ぎます。
【6】ネットごと、もしくは、ネットに入ったニットをネットごとバスタオルで包み、洗濯機のドライコースにある脱水で30秒~1分ほど脱水し、残っている水分はバスタオルで吸い取ります。
【7】ネットから出して形を整えたら、バスタオルの上に平置きするか、肩に厚みがあるハンガーを使うか、物干し竿に身ごろの縦のラインを乗せるなど、ニットに適した、ニットが伸びない方法で乾かします。
細かく手順を記載しますと、面倒に感じてしまうのですが、
実際は、あまり時間もかからず、きれいさっぱり汚れを落とすことができますので、
どうしても洗いたいような汚れが付いてしまったときや、シーズン最後のお手入れに、セルフクリーニングはいかがでしょう。
もし、それ程汚れていないけれど、ニオイを取りたい、何となく気になるというような場合は、
お洋服専用のブラシでブラッシングし、スチーマーで蒸気をあててしまえば十分かと思います。
今年の秋冬は、お手持ちのウール素材を、昨年よりも丁寧に扱ってみてはいかがでしょうか。
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