先月いただいたお手紙の結びに、「10月吉日」という文字があった。
お作法は面倒だと感じたり、迷信のようなものでしょと気に留めずに過ごすことも悪いことではないし、ダメなことでもないのだけれど、
さりげなく、このような文字を添えることができたり、そこから相手の気持ちを汲み取ることができると、
気持ちや相手と関わる時間の豊かさが増すような気が致します。
暮らしの中のひとコマを、昨日の自分よりもほんの少しだけ深く味わえるように、
今回は、「吉日」という言葉の使いどころや意味を、この機会におさらいしてみませんか。
ご興味ありましたら、柊希にお付き合いいただけましたら幸いです。
「吉日」とは、良いお日柄を指す言葉で、案内状やお手紙の結びなどに「10月吉日」と記して使います。
案内状やお手紙の結びに「吉日」と記されていたとき、何を意味しているかということは十分に理解していても、
いざ、自分で使おうとすると、この場面で「吉日」と記しても良いのだろうか、と不安に感じることはないでしょうでしょうか。
ワタクシ、自分が差出人であるお手紙内で初めて使用したときは、自信が持てずに何度も確認を重ねて使用した記憶があります。
本来、手紙の結びに「吉日」と書き記す目的は、縁起を担ぐことと、
お手紙のお作法のひとつでもある、お手紙をしたためた時期を相手に伝えること。
ですから、主にポジティブな内容のお知らせや、お手紙の結びに使われているのですが、
昨今は、慶事シーンでの「縁起担ぎ」だけでなく、
日付をはっきりと記したくないようなときに使うことができる、都合がよい言葉として使われる機会が多いように感じます。
案内状なども、案内状という名のお手紙ですので、したためた日付を記入するのがお作法ですが、
今とは違い、大量の案内状の準備を手書き作業で行っていた頃は、
お手紙や宛名を書き終えた順に発送していたのでは、人によって届く日が異なり失礼になってしまったり、
お手紙をしたためた日と、先方に届く日が離れすぎることから先方の方に違和感を与えてしまったりと、
何かと気遣わなくてはいけないことも多かったのでしょうね。
案内状をしたためた日付を曖昧にすることで、無駄な煩わしさから解放されて、モノゴトを円滑に進められるようになったのかもしれません。
案内状と言えば、足を運んで欲しい日をお知らせする招待状なども含まれますが、
このような招待状の場合、ご招待する「※月※日」という日付以外に、この招待状をしたためた日を記載した場合、
招待状を受け取った方の中には、日付を間違う方が出ることも考えられます。
このようなトラブルを防ぎ、一番大切な日付をより際立たせる意味で、
あえて、招待状をしたためた日は「※月吉日」という形式をとることもあります。
今も縁起ものの言葉であることに変わりない「吉日」ですが、
こうして見てみますと、今の時代でも「ものごとを円滑に進めるための言葉」としての力を存分に発揮しているように思います。
ただ、一点だけ。便利な言葉ではありますが、気を付けたいシーンもあります。
それは、お礼状に使う場合です。
お礼を伝える日は、曖昧にするよりもストレートに伝えた方がお互いに気持ちが良いですので、
お礼状に日付を書き添える場合には、「※月吉日」と曖昧にせずに、
したためた日を素直に書き記し、お手紙を速やかに発送することを意識すると間違いないかと思います。
手書きのお手紙を送る機会は年々減っていくのかもしれませんが、
ここぞという機会には、ちらりと思い出していただき、お役立ていただけましたら幸いです。
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