朝食のパンを買いに、近所のパン屋へ向かった。
パンは必ずここで。と言えるくらいの情熱を向けている、特別なパン屋があるわけではないのだけれど、
幸い、満足できるパン屋が近所に点在しているため、都合や気分で向かう先を決めている。
その日は、用事ついでに立ち寄るため、本来の目的地から一番近いパン屋を目指した。
見るからに時代の最先端を行っているというような店構えではないけれど、
街の人たちから長い間、愛されていることが分かる雰囲気をまとったパン屋だ。
香ばしい香りと共に並べられているパンは、よそ行きのパンではなく、
どれも、日常に寄り添ってくれるような、心にも体にも優しい味がするパンだ。
しかし、この時季だけは少し違う雰囲気だと気付いたのは、つい先日のこと。
見慣れたパンの並びには、本格的なシュトレンと2種類のベラヴェカ(ベラベッカとも)が並んでいた。
ベラヴェカ(ベラベッカ)とは、クリスマスまでの時間を丁寧に過ごしながら、少しずつ食べるシュトレンと同じように、
熟成していく過程を、時間をかけて味わうフランスの伝統菓子のひとつである。
日本でもクリスマスのお菓子として楽しむ方も増えているため、
この時季、目にしている方は多いのではないかと思う。
もう少しだけベラヴェカ(ベラベッカ)ベのことを補足すると、
ベラヴェカ(ベラベッカ)とは、フランスの北東部に位置しているアルザス地方の言葉で「洋ナシのパン」という意味があり、
実際の伝統菓子であるベラヴェカ(ベラベッカ)には、洋ナシをはじめとする多くの種類のドライフルーツやナッツが練り込まれている。
しかし、パンというよりは、ドライフルーツやナッツを少量のパン生地で繋ぎ固めた、
濃厚な自然の恵みがギッシリと詰まった味わい深い、贅沢なお菓子だ。
きっと昔は、この時季にフレッシュなフルーツを味わうことは難しかったため、
保存食として作られていたドライフルーツやナッツをサクランボのお酒やスパイスなどを使って焼き上げていたのだろうと思う。
シュトレンと同じように、日を追うごとに熟成していくため、スライスしたものを毎日少しずつ味わうのだ。
ベラヴェカ(ベラベッカ)が、甘くてバターのインパクトも感じられるシュトレンと異なるのは、
お砂糖やバターを使わずに作られる点。
もちろん、美味しさを追求する現代のベラヴェカ(ベラベッカ)は、その通りはないこともあるかもしれないけれど、
材料の95%近くがフルーツとナッツなので、ベラヴェカ(ベラベッカ)はヘルシーなイメージがあり、
お菓子ではあるけれど、自然な甘味やスパイスの風味から、
コーヒーや紅茶に留まらず、お酒に合わせる方も多い伝統菓子だ。
私は数えられるくらいの回数しか口にしたことはないのだけれど、
ひと口で十分に満足できたとき、とても贅沢な、大人の時間を過ごすことができるようになったような、そのような気がしたことを覚えている。
今年1年の中で手にした多くの幸せを思い返しつつ、感謝しつつ、ベラヴェカ(ベラベッカ)を味わう冬というのも、良いのではないだろうかと思う。
ちなみに、このベラヴェカ(ベラベッカ)発祥のアルザス地方だけれど、
ここは、町全体、村全体が、絵本の中の景色のような場所なので、
ご興味ありましたら、アルザスの街並みをネット越しに眺めつつ、お好きなお飲み物と一緒にベラヴェカ(ベラベッカ)をひと口。というのもおすすめです。
今日も皆さんに、ほっと一息つく時間がありますように☆彡
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