飲食店でくじを引いた。
当たったのはプラスティック製の魚の玩具とキャラメルコーン(※東ハトの商品)だ。
小さなお子さんでもいれば戦利品を託そうかと思ったのだけれど、生憎、周りを見渡してみるも小さな子どもの姿はなく、
ギリギリ入るか否かというサイズのバッグに半ば強引にそれらを詰め込んで帰った。
ダイニングテーブルにコロンと転がる正体不明の魚の玩具は、違和感しか放っていなかったけれど、せっかくなので観葉植物の枝葉の中に忍ばせることにした。
それからしばらく経ったその日、小腹が空いてキッチンを右往左往していると戦利品のキャラメルコーンが目に留まった。
それを小皿に取り出すと、カラカランといい音を立てて甘い香りがふわっと広がった。
ひと際いい音がしたなと小皿を覗き込むと、ピーナッツが数粒転がっていた。
甘いものを摘まんだ後に少しだけ欲しくなる塩気、塩気を口にすれば再び欲しくなる甘いもの。
私は、この魅惑的な戦略の縁の下の力持ち、いや、影のボスであるかのような存在がピーナッツだと思っていた。
しかし、数年前にこのピーナッツには想像していたよりも、しっかりとした目的があって入れられていることを知る機会があった。
今でこそ当たり前のように入れられている乾燥剤だけれど、キャラメルコーンが生まれた当時はとても高価なアイテムだったこともあり、
ピーナッツにまぶされている塩が袋の中の湿気を吸うことで、キャラメルコーンが湿気を吸わないように考えられていたという。
更に、きな粉にお砂糖を混ぜてもそれほど甘さを感じることはないけれど、そこに少量の塩を加えることできな粉の甘味が増すように、
キャラメルコーンの甘さを引き立てるためには少量の塩が必要ということで、
塩気を含んだピーナッツを入れて、キャラメルコーン本来の味を楽しんでもらえるよう計算されているというのだ。
このピーナッツが遂行している“乾燥と塩気を行き渡らせる”という2つのミッションだけれども、
感心したのは、これらのミッションは、袋詰めされてから私たちの手元に届くまでに受ける振動を利用して行われているということ。
輸送中のピーナッツは、袋の中で上下左右に移動するけれど、この移動を利用して湿気を吸い取りながら、ピーナッツについていた塩をキャラメルコーンに行き渡らせているのだ。
私たちの手元に届く頃にはピーナッツの大仕事は一段落し、袋の底に溜まっていることがほとんどだけれど、
これはこれで、人々の口に入り、甘さと塩気で幸せを届けるという次のミッションを待っているということのようだ。
もういつのことだったかは記憶にないのだけれど、若かりし頃、このピーナッツは地味だけれどいい仕事をしていると主張する友人と、このピーナッツは必要ないと主張する友人がいた。
当時の私は今と変わらず前者だったのだけれど、あの時代のあの場所に再び行くことが出来るのであれば、必要ないと主張していた友人にピーナッツのミッションを耳打ちしたい気分である。
そのようなことを思いながら、キャラメルコーンの甘さを堪能した日。
キャラメルコーンを口にする機会がありましたら、ミッションを終えたピーナッツに称賛の拍手を!
関連リンク:
画像をお借りしています:https://jp.pinterest.com/