計量という作業工程が苦手な私は料理はすれど、
余程のことが無い限りパンとお菓子はノータッチ。
しかし、世の中は上手く出来ているのだ。
ありがたいことに私の周りにはパン作りとお菓子作りに長けた友人がいる。
気心知れた仲なので我が家で食事会をする際には、
友人の作るパンの中から特に私が好きな数品をリクエストする。
食べたいものを好き勝手言い放つ側になるのも新鮮で心地よいものだなと感じたりしながら。
普段は大雑把な友人なのだけれども計量作業などは苦にはならないのだと言う。
私の苦手を自然とカバーしてくれている友人に感謝しつつ、
パンに合うメニューを作るためにキッチンに立つのです。
その時に私がリクエストした中のひとつは、
フランスブルターニュ地方の伝統菓子、クイニーアマン。
ブルターニュ地方の古語で「クイニー」はお菓子、アマンは「バター」を意味する単語です。
バターのお菓子と言われるだけあって有塩バターがたっぷりと使われています。
外側はお砂糖とバターを混ぜ合わせたもので薄く覆われているので
香ばしくカリッとしていて型崩れの心配も要らないほど。
一方、中はサクサクとしっとりが混ざり合っていて様々な食感を楽しむことができるのも魅力です。
外側のカリッとした部分は、塩梅によってはちぎりにくいこともあるのですが、
そこは、クイニーアマンのご愛敬。
ひとちぎり口に含んだ時に感じられる甘さの奥にあるコクのある塩気は有塩バターの印です。
女性陣としてはカロリーを気にしてしまう一品ではありますが、
このリッチな味わいが人気の理由でしょうね。
休日のブランチにクイニーアマンを濃い目の紅茶、またはコーヒーなどと一緒にゆっくり楽しみたい。
そう思わせる存在です。
クイニーアマン、これだけリッチな味わいで伝統菓子と言うからには、
素敵なエピソードをお持ちなのでしょうねと思っておりましたら、
ブルターニュに在った、あるパン屋さんの失敗から出来たお菓子なのだそう。
パン生地に使われた小麦粉に見合わないほど過剰な量の有塩バターやお砂糖を
うっかり生地と一緒に放置してしまいバターが溶けてしまったらしいのです。
大切な食材を捨てるのはもったいないという気持ちから、
溶けたバターを生地に丁寧に混ぜ込んで馴染ませ
試しに焼いてみたところ、とても美味しいパンが焼きあがったのだそう。
お菓子と言われているのにパン屋さんに置いてあるのは、こういう背景があるからなのでしょう。
失敗から一歩を踏み出してくれたパン屋さんのおかげで
クイニーアマンは誕生しました。
最近、何かに失敗して気落ちしているあなた。
失敗したらどうしよう、と初めの一歩を踏み出す勇気が出ずにいるあなた。
その失敗も成功と同じように未来の何かに繋がっているはず。
色んなことを体験して、感じて、考えることができるって素敵なことですよね。
パン屋さんでクイニーアマンを見つけたら、
パン屋さんの諦めなかった一歩を思い出しつつ
失敗から出来たとは思えないクイニーアマンのリッチな味わいをご賞味あれ。
ここへ足を運んでくださった皆さんの今日が心穏やかでありますように☆彡