役所の前を通るとブロックで作られたプランターが、敷地をぐるりと取り囲むように配置してあった。
そこには、プランター内の土を耕したばかりだということが分かる柔らかそうな土が入っており、色鮮やかなパンジーが植えられていた。
街の中に少しずつ増え始めた色に目が留まる度に、春を待ち侘びる気持ちが沸々と湧いてくるように思う。
パンジーは、艶やか且つ個性的な表情を持った可愛らしいお花なのだけれど、私はパンジーを目にするとき、どういう訳だかスミレの花をセットで思い出すことが多い。
スミレは、パンジーやビオラなどの原種と言われている草花で、親戚のようなものなのだけれど、多分私は、若干、スミレ贔屓なのだろうということに最近気が付いた。
スミレの花は小さく、茎もひ弱そうに見えるのだけれど、実はとても力強い生命力を持った草花で、厳しい環境下でも繁殖し、花を咲かせる特徴がある。
そして、私たちの視線は、花の方へと向かってしまいがちなのだけれど、葉っぱをよく見てみると水連の葉っぱのような丸い葉を持ち、この葉っぱが、なかなか愛らしいのである。
日本では草花といった扱いを受けることが多いスミレだけれど、ヨーロッパ辺りでは春を告げる花でメジャーな花のひとつだ。
特にフランスの南西部にあるトゥールーズという街は、スミレの花と縁が深い街で知られており、スミレの花をお砂糖でコーティングしたスミレの砂糖菓子が有名である。
そしてこの時季になると、更にスミレのブーケ、スミレの花をそのまま閉じ込めたキャンディーなど、様々なスミレ商品が登場し、すぐそばまで来ている春を教えてくれるのだ。
以前の私にとって、スミレは可愛らしい草花でしかなかったのだけれど、
そう話す私に、お世話になっていた知人が、スミレの良さを教えてあげると言ってスミレのブーケを贈ってくださったことがあった。
数えきれないほどの量のスミレを贅沢に束ねたそれは、ずっしりと重く、パウダーのようなキャンディーのようなしっかりとした甘く、クラシカルな香りがした。
スミレの花を想像していただければ分かるのだけれど、スミレの茎は爪楊枝よりも細く華奢である。
これを、それなりの大きさ、ボリュームのブーケに仕立てるのだから、ヨーロッパでこの時季に用意されるスミレの量は、想像できないくらい膨大な量なのだろうと思う。
このスミレの香りは古から女性たちの憧れであり、今でもスミレの香りをした香水は多くの人に愛されている。
しかし、どうしてスミレと言えばフランスのトゥールーズという地なのか。
それは、古の時代のある兵士がこの土地に住んでいた恋人にスミレを贈ったことが始まりなり、この地でスミレの栽培が始まったのだとか。
スミレの香りはとても儚く、鼻をスミレに近づけて香りを拾ったとしても、その瞬間にさーっと香りが姿を消してしまう特徴がある。
スミレにはこのような特徴や背景があるため、多くの人がこの甘く儚い様に魅了され、外国製の香水にはスミレの香りを含むものが多いのかもしれない、と個人的には思っている。
そろそろ日本でもスミレが咲き始める頃です。
スミレを目にする機会がありましたら、お好きなスタイルでスミレに触れてみてはいかがでしょうか。
その時のおともにでも、今回のお話をちらりと思い出していただけましたら幸いです。
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