季節の移り変わりを感じながら苦味を盛るのは、この時季のちょっとした楽しみである。
すっかり冬仕様が定着しきっている体を、スムースに春仕様の体へと変えていくコツのひとつに「山菜を食べる」という方法がある。
山菜を食べるだけで?と思ってしまうけれど、冬眠から目覚めたクマも、まず最初にフキノトウを口にして体を目覚めさせるそうだ。
山菜の苦味には、冬の寒さによって縮こまっていた体に刺激を与えて、体を春仕様にするためのスイッチを押してくれる力があるという。
山菜でスイッチを押し、山菜をはじめとする春野菜を積極的に摂ることで、
冬の間に体内に溜め込んだ脂肪や毒素、老廃物といった不要なものが体の外へ押し出されるのだけれど、
この時、不要なものと一緒に、冬から春にかけて溜め込んでしまった疲れも取り除かれるため、春仕様に変わった体は軽やかに感じられるのだ。
中には何も感じられないという方もいらっしゃるけれど、小さな不調を感じることなく春を過ごすことができている時点で、体の機能が働いてスムースに、冬仕様から春仕様に切り替わった印でもあるように思う。
先人たちはこのような、本能的な機能が私たちの体に備わっていることを知っていたのだろう。
「春には苦みを盛れ」という言葉を残してくれている。
これは、大量に山菜を食べなくてはいけないというようなことではなく、
春の山菜、春野菜と一口に言っても様々な種類があるため、少しずつ楽しみながら口にして、本格的な春を迎えても良いのではないかと思う。
山菜にトライして苦い……と感じられた時には、苦手だと思う気持ちを少しの間だけ脇に置き、「春スイッチON」と心の中で唱えてみてはいかがだろうか。
せっかくなので、今回は「ふきのとう」のお話を少し。
苦味を苦手とする方は、「ふきのとう」の見た目の可愛らしさに油断して口にしますと、爽やかな苦味に面食らうこともありますが、あの苦味こそが「ふきのとう」からの贈り物です。
「ふきのとう」と「ふき」は収穫時期が異なるので別物だと思われがちなのですが、この2つは同じものです。
地上に顔を出したばかりのもの(ふきのとう)か、ぐんぐん伸びた茎の部分(ふき)かという違いです。
「ふきのとう」には、体内にたまっている余分な塩分を排出してくれたり、利尿作用をうながしてくれるカリウムが豊富なので、
外食続きの体や、味が濃いものがお好きな方、体の浮腫みを緩和させたい方にも嬉しい山菜です。
そして、あの苦味成分には、体を春仕様に切り替えること以外にも、
発がん性の物質を抑制したり、新陳代謝を促す性質があると言われていますので、
お嫌いでなければ、春の訪れを感じながら体内調整も兼ねて味わってみてはいかがでしょうか。
私も少しずつ春を告げてくれる食材を口にしているのですが、「ふきのとう」はまだですので、近々、まずは定番の天ぷらで楽しもうと目論んでおります。
今年の春も、程よく苦味を盛ってまいりましょ。
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