路地を入ったところにアットホームな雰囲気をした小さな花屋がある。
季節の花々だけでなく、一点もののちょっとした雑貨なども扱っているからなのか、いつも数名の客人が店内にいる。
私は、ここでお花を買ったことはないけれど、店内奥にあるフランスの家庭料理を食べさせてくれるレストラン目当てに、足を運ぶ。
花屋を素通りして花屋内にある扉を開け、もうひとつのお店へ向かう、この演出をちょっと気に入っている。
先日このお店の前を通ると、お昼時ということもあり、お店のランチメニューが記された立て看板が道沿いに出ていた。
それを横目で確認しつつ通り過ぎたのだけれど、この日はメニューの中にオゼイユの文字を見つけた。
日本でオゼイユは、ハーブの一種として売られてはいるのだけれど、雑草のような扱いをされることもあり、あまりメジャーな食材ではない。
しかし、イギリスやフランスでは夏になるとよく目にする野菜で、オゼイユを見ると夏を連想させられるのだ。
オゼイユは、サラダホウレンソウやルッコラをもっと野性的な雰囲気にしたようなビジュアルをしている。
主に葉の部分を食べるのだけれど、生の葉を口に含むと酸味を感じるところも特徴だろうか。
先程、日本では雑草のような扱いを受けていると言ったけれど、中には子どもの頃に雑草を引きちぎったときに感じた酸っぱい匂いを思い出す方もいらっしゃるのではないだろうか。
私の友人は、オゼイユの生葉を口にしたとき、子どもの頃に齧ったことがあるカタバミの茎に似た味がする、というようなことを言っていた。
イギリスやフランスでは、このオゼイユをバターで炒めたものをサーモンやお肉と合わせたり、オゼイユをクリームソースやスープに仕立てたりする。
葉が柔らかい若葉は、生のままカルパッチョのトッピングにしたりサンドウィッチの具材にしたり、サラダに混ぜ合わせたりと、幅広いメニューの食材として使われている。
なかなか味のイメージが湧かないかと思うのだけれど、ノーマルタイプのホウレンソウの根っこ近くを生で食べたときに、少し歯がキュッとするような酸味を感じられたことはないだろうか。
オゼイユは、あのような感覚を伴う、もう少しはっきりとした酸味を持っている。
私の記憶にオゼイユが強く刻まれたきっかけは、オゼイユが古代エジプトの王、ファラオの胃薬として使われていたという話を聴いてからである。
どのような時代であっても、どのような食生活を送っていても、今で言うところの胃薬のようなものはあったのだなと感じた記憶がある。
もとは王の胃薬だったので、一般家庭で食べられるようになったのは随分と年月が経ってからなのだろうけれど、夏の暑さによって胃腸が弱る時季、彼らはオゼイユで体調を整えてきたようだ。
オゼイユはこの時季から夏の間中食べることができるビタミン豊富なハーブなので、機会がありました際には、話のネタに召し上がってみてはいかがでしょうか。
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