今年は芍薬(しゃくやく)を飾りそびれてしまった。
一年を通して何かしらの花を飾って楽しんでいるのだけれど、春から夏の時季は次から次に艶やかな花が開花の時を迎えるため、のんびりしていると飾りそびれてしまう花が出てくるという贅沢な悩みが生まれる。
芍薬(しゃくやく)であれば、まだぎりぎり、駆け込みで楽しめそうな気もしているのだけれど、私が好きな紫陽花シーズンに突入してしまったため、芍薬(しゃくやく)は来年のお楽しみにとっておこうと思う。
芍薬(しゃくやく)と言えば日本では、「立てば芍薬、坐れば牡丹、歩く姿は百合の花」の言葉でお馴染みだろうか。
日中は、幾重にも重なる芸術的な花びらを開き、見る人を魅了するのだけれど、日が落ちる頃になると、その花びらを閉じるという特徴がある。
この様子が、恥ずかしがっている女性の様に見えたことから、「恥じらい」という花言葉が付けられている。
そして、芍薬(しゃくやく)は、あの小野小町も愛した花だとも言われおり、何となく和のイメージが強いように感じるのだけれど、英語名は、コスメやフレグランスで耳慣れている方もいらっしゃるであろう、ピオニーだ。
ピオニーの語源は、ギリシャ神話に登場する医療や薬を司る神様の名といわれており、芍薬(しゃくやく)は世界中で古くから親しまれている花のひとつである。
医療や薬を司る神様の名を語源に持ち、日本名の中にも「薬」の文字が含まれていることからも薄々想像できるのだけれど、芍薬(しゃくやく)は古くから漢方薬としても使用されてきた植物である。
特に、乾燥させた根は女性ホルモンを整える力があるそうで、冷え性や貧血、月経痛や生理不順、肌トラブル、その他の婦人病に効くことから、女性の守り神のような扱いの花だ。
他にも、古代ギリシャ人は芍薬(しゃくやく)を、月の光から生まれた花と考えていたそうで、災厄除けのような儀式にも使われていたという話も残っており、話題に事欠かない花という印象もある。
コスメやフレグランスで感じるピオニーの香りと言えば、バラに似ているような上品な甘さの中に爽やかさが溶けているような絶妙な香りで、姿だけでなく香りでも人を魅了するのだけれど、
芍薬(しゃくやく)の花から香料となる成分を直接、採ることはできないという。
このため、コスメやフレグランスにあるピオニーの香りは、芍薬(/ピオニー)に似た香りを、様々な香料を混ぜ合わせて作っているのだそう。
私はてっきり、天然の香料を濃縮させたものを使用しているのだろうと思っていたため、この話を聞いてからは、どの商品のピオニーが自分好みなのか、フレッシュな芍薬(しゃくやく)の香りに近いのか、聞き分けて楽しんでいる。
古から女性に寄り添ってきた花、芍薬(しゃくやく)。
見頃は6月中といったところでしょうか。
ご興味ありましたら、芸術的な美しさを放つ芍薬(しゃくやく)を愛でるもよし、そのフレッシュな香りを楽しむもよし、コスメやフレグランスを通して芍薬(しゃくやく)に秘められた力を受け取るもよし。
各々のお好みで楽しんでみてはいかがでしょうか。
その際には、今回のお話を頭の片隅でチラリと思い出していただけましたら幸いです。
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